三好市池田町中西の鍼灸(しんきゅう)師向井健市さん(71)=鍼灸マッサージ治療院経営=が、過疎化で人がいなくなった村で暮らす動物の物語「動物王国捕物控(とりものひかえ)」(四六判、198ページ、1320円)を文芸社(東京)から自費出版した。動物の国で起きるさまざまな事件をイヌの警察署長らが解決する連作短編集。小説投稿サイトに発表した作品をまとめた。
人間が村を去った後、イノシシやサルが王国を建てる場面から物語が始まる。疫病の流行や隣国からの侵攻、1人暮らしのブタの老婦人が詐欺の被害に遭うといった、次々と起きる問題をイヌの警察署長らが情に訴える形で解決に導く。盲導犬と生活する向井さんをモデルにした鍼灸師「山谷麻也(やまやまや)」も登場する。
向井さんは2021年から小説投稿サイトに、「山谷麻也」の名義で動物王国や他の短編の投稿を続けていた。文芸社などが主催したエッセーコンテストに応募した縁で編集者と知り合い、出版に至った。発表した全26話のうち19話を選んで本に収めた。
向井さんは旧三縄村(現三好市)の出身。関西の大学を中退後、大阪や東京で出版関係の仕事に就いた。39歳で視野狭窄(きょうさく)が進む網膜色素変性症と診断され、鍼灸師の資格を取った。池田町にUターンした後、19年から治療院を営んでいる。目に負担をかけないようパソコン画面を白黒反転させ、拡大して執筆した。
向井さんは「生まれ育った村をモデルにした作品。故郷の人や自然、今の社会に対する思いを物語にした。動物たちの生きざまを面白がって読んでもらいたい」とPRしている。
県内主要書店やインターネットの販売サイトで購入できる。