徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)
今、乳児期早期からスマホやパソコンによってメディアに接触してきた子どもたちのコミュニケーション能力や言葉の発達に悪影響が出るのではないかと心配されています。
言葉は人と人のコミュニケーションの大切な手段です。子どもが簡単な言葉を話すようになるまでには約1年かかります。しかし乳幼児のコミュニケーションの手段は言葉だけではありません。
子どもは生まれたばかりでもすぐに周りの大人と視線を合わせ、声を出して、微笑みかけます。自分を守ってくれる対象を探しているように見えます。
このような新生児からの働きかけに対して周囲の大人がしっかり反応してやると、子どもは自分が見守られているという安心感が得られ、安心感の上に親子の愛着関係が確立されます。このような親子の良好な関係が確立されると、子どもは自分の要求や気持ちを伝えようとして声を出します。
子どもからの発声に対して大人がまねをしたり発声したりを繰り返すことで言葉が生まれます。コミュニケーションの手段として言葉はとても便利なものですが、言葉の内容だけで言いたいことを伝えるのではなく、話すときの態度や身振り、顔つき、視線や口調などでそのときの気持ちを伝えようとします。
もし子どもからの働きかけがあったときに大人がスマホやパソコンの画面ばかりを見ていると、子どもの顔つきや表情、視線などを見ることが出来ず、子どもが何を考えているのか、何を訴えたいのかを想像することが出来ません。人のコミュニケーションで大事なことは相手の目や顔を見て言いたいことを伝えることなのです。