阿波忌部麁服保存会の今後の活動方針などを話し合う木村代表理事(左)ら=吉野川市山川町

阿波忌部麁服保存会の今後の活動方針などを話し合う木村代表理事(左)ら=吉野川市山川町

 2019年11月の皇位継承の重要祭祀(さいし)「大嘗祭(だいじょうさい)」に麻織物「麁服(あらたえ)」を調進した吉野川市山川町の阿波忌部麁服調進協議会が、一般社団法人阿波忌部麁服保存会に衣替えし、新たなスタートを切った。これまでの活動や成果を次代に継承し、貴重な伝統行事を保護するのが目的。麻文化の発展を目指し、啓発活動やイベント開催にも力を入れる。

 協議会は18年10月、令和の大嘗祭に向け、山川町の山崎忌部神社の氏子を中心に結成。美馬市木屋平で作られた麻糸を受け取り、反物を織り上げた。機織り作業は、募集に応じた同神社の氏子の「織り女(め)」7人が担った。

 平成の大嘗祭以来、約30年ぶりとなった麁服作りは前回の調進に関わった人の助言もあり、作業の進め方や流れは把握できたものの実務面では苦労した。特に、機織りの経験がない織り女を短期間でどう育成するのかが大きな課題だった。地元に機織り技術の伝承者がいなかったため県外の熟練者に来県して指導してもらうなど、計画通りに作業が進むよう気を使ったという。

 会員らは、蓄積された経験やノウハウを伝えていかなければ次の麁服調進の際も同じように苦労すると懸念。資料やデータをできるだけ残して伝統文化を次代につないでいく必要があると考え、昨年10月に協議会を解散し、同じメンバー15人で保存会を設立した。

 今後、令和の大嘗祭に関する記録の整理や保存を進める。同時に、麁服や山崎忌部神社の歴史を中高生に説明する啓発活動、麻製品の制作販売にも取り組む。今年10月には山川町で麻に関する講演や作品展示を行う「日本麻フェスティバル」を開く予定で、旧麻植郡の地名の由来となり地域の歴史と深くつながっている麻文化の再興を目指す。

 木村雅彦代表理事(62)は「皇室とつながる大きな伝統行事があることや、この地域に古くから伝わる麻文化を広く知ってもらえるよう活動していきたい」と意気込んでいる。