本県の高校野球史に新たな一ページが加えられることになる。

 城東高校が第95回記念選抜高校野球大会に21世紀枠で出場することが決まった。春夏を通じて初の甲子園だ。球児憧れの大舞台での躍動を期待したい。

 部員はマネジャーを含めても13人と少数だ。練習時間の制約もある中、校是の「文武両道」を実践し、ひたむきに白球を追ってきた。選手、監督はもちろん、保護者や関係者らも感激はひとしおだろう。

 創立120周年の同校だが、硬式野球部の創部は1996年と歴史は浅い。県春季大会で優勝経験が1回はあるとはいえ、長年、県内強豪校の厚い壁を破ることができなかった。

 そうした状況から抜け出すため、前監督の松田康明部長や昨春就任した新治良佑監督らが目指したのが選手の主体性を重視した新スタイルの野球である。

 状況を一人一人が考え、判断力を培い、機動力に磨きをかけてチーム力向上を図ってきた。多くの練習メニューも選手が考える。

 試合中、適切という判断をした結果であれば、果敢な走塁などでアウトになったとしても責めることはしない。選手が萎縮せず、伸び伸びとプレーするムードが出来上がった。

 昨年の県秋季大会は4位で、四国大会出場を逃したものの、夏の徳島大会に続く4強入りを果たした。安定した成績は、理想とする「頭と足を使う野球」が浸透しつつある証左だ。

 戦力以外も加味する21世紀枠は2001年の第73回大会から導入された。県内からの選出は10年の川島、11年の城南、19年の富岡西に続いて、城東が4校目である。

 主体性の発揮に加え、選考委員の心を動かしたのは小さな野球部の奮闘だ。城東は県内屈指の進学校で、平日は7時限目まで授業がある。練習は午後8時までとなっており、放課後に確保できる練習時間は2時間半程度と短い。

 他県の私立などでは優秀な選手を集め、勝つことに重きを置く高校は少なくない。勝利至上主義のひずみが指摘される中で、野球一辺倒ではなく、あいさつ運動などにも取り組む城東の選出は意義がある。

 同じ境遇の高校球児や中学生にとっても大きな刺激となり、ファンの共感を得ることだろう。

 3月18日に開幕する選抜大会には、例年よりも4校多い36校が出場する。新型コロナウイルス禍は収束していないとはいえ、大勢の県民が応援に駆けつけるはずだ。

 臆することなく、平常心で試合に臨み、良き思い出をつくってほしい。