徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)
呼吸は身体に必要な酸素を全身臓器に送り、不必要な二酸化炭素を排出し、身体の中の酸素と二酸化炭素の濃度を一定に保つことで身体の恒常性を維持する大切な生理機能です。呼吸がうまく出来なければ人は生命活動を維持することが出来なくなり、進行すれば生命の危機に陥ります。今月は小児の呼吸不全について考えてみました。
身体は酸素濃度を一定に保つことで身体各部の細胞が代謝を行うことが出来ます。これで生命活動を維持します。呼吸に問題があって、酸素濃度を一定に保つことが出来なくなった状態を呼吸不全と呼びます。
空気は鼻、咽喉(のど)、気管、気管支から枝分かれした細気管支を経て肺胞に達します。肺胞は毛細血管に包まれており、肺胞壁を通して酸素と二酸化炭素のガス交換を行います。鼻咽喉から肺胞までの空気の通り道を気道と呼びます。気道のどこかに原因があって呼吸障害が発生すると呼吸不全になります。
小児の呼吸機能は成人に比べると解剖学的にも生理学的にも脆弱で、呼吸不全に陥りやすいことが特徴です。
小児の気道は細く空気が通る時の抵抗性が高いことや、気道粘膜の炎症性浮腫が起こりやすく、気道内腔の面積が小さくなりやすいものです。また気道壁が軟弱なために少しの外力でも閉塞しやすいものです。さらに胸郭が軟弱で常に呼吸筋が緊張しており、呼吸筋が疲労しやすいものです。
小児は代謝活動が活発で、酸素消費量が成人に比べて多いのに一回換気量が少なく、呼吸数が多いために換気効率が悪いことも呼吸不全に陥りやすい原因のひとつです。