グレートラの大吉(推定5カ月、♂)は元気いっぱいの愛されキャラ。現在暮らすあわねこ保育園(徳島市)では園内を走り回るのが日課だ。しかし、保護されたときは今の姿から想像できない厳しい状況にあった。

 2022年9月14日の夜。20代女性が仕事帰りに徳島市の田宮街道を車で走っていると、中央分離帯の植え込みから頭を出して鳴いている子猫が目に入った。「どうしてこんな場所に子猫が? 事故に遭うかもしれない」。心配で見過ごすことはできず、車を止め、暗い植え込みの中をスマホのライトと鳴き声を頼りに捜索。偶然通りかかったバイクの男性も状況に気付き、二人で40分間探して、たった一匹でいた大吉を見つけた。

写真左が骨折した右後ろ足、右は正常な左後ろ足=女性提供

 ようやく保護できて安心したのもつかの間、右後ろ足に力が入っていないことに気付いた。元気もない。女性は不安を抱きながら病院へ。診断の結果は右大腿(だいたい)骨骨折で、獣医師からは「骨の成長点を損傷しており、このまま放置すると関節ごと固まって動かなくなる」と告げられた。さらに手術にかかる費用が15万円と説明され、女性は頭が真っ白になった。それでも「関わった以上は責任を持って治療したい」と決意。クラウドファンディングで手術費用への支援を呼び掛けたところ、必要額を超える寄付が集まった。

クロスピンによって固定され、手術は成功した=女性提供
術後は歩けるまで回復=女性提供

 手術を受けてすっかり完治し、あわねこ保育園で家族に迎え入れてくれる人が現れるのを待つ大吉。毛並みと顔立ちがよく、保育園メンバーからは「美男子」ならぬ「美にゃんし」と呼ばれている。

綺麗な毛並みと整った顔立ちで園内では人気者

 井上智美園長は「発見した女性の勇気ある行動と費用を寄付してくれた人がいてこそ、今の大吉がいることを忘れてはいけない」と話す。保護した女性は「大吉が元気な姿を見せてくれると自分のことのようにうれしい。多くの方からの支援もあり、本当に救われたのは私。里親が見つかってくれたら」と願っている。(富樫陸)