徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)

 小児科外来で最も多く見られるのが感冒です。その多くが呼吸器症状を訴えますが、中には重篤な呼吸障害、呼吸不全を呈する場合があります。また感冒以外にも呼吸不全を示す疾患がありますから注意が必要です。

 小児の呼吸器疾患の中にクループ症候群と呼ばれる疾患があります。クループ症候群は主に喉頭から気管上部の気道粘膜が浮腫状に腫れて、息を吸い込む時に呼吸音がゼーゼー聞こえたり、犬の吠えるようなケンケンした咳が出たり、かすれ声になるなど、急性に起こった上気道の閉塞症状を特徴とする呼吸器疾患の総称です。

 クループには主としてウィルス感染を原因とした声門および声門下部の粘膜が浮腫状に腫れて発生する狭義のクループと、色々な原因によるクループ症状を示す疾患の総称であるクループ症候群があります。

 乳児の声門下部は気道の中で最も狭いために、ウィルス感染が起こった時に粘膜が浮腫状に腫れやすい場所です。声門は発声に関する部分ですからここが腫れるとかすれ声や犬の吠える時のような咳が出ます。さらに気道抵抗が増加して、呼吸の仕事量が増加します。この時に大声を上げて泣いたり興奮したりすると、呼吸時の気流が乱れて吸気時にゼーゼーした呼吸音が聞こえ呼吸困難となります。

 クループ症候群にはヒブに伴う喉頭蓋炎や黄色ブドウ球菌による気管支炎なども含まれます。ヒブによる喉頭蓋炎はヒブワクチンの普及によって減少しています。

 また感染以外のクループ症候群にはアレルギーや気道異物、腫瘍、外傷などが原因として上げられます。