徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)
今月は呼吸不全について考えています。呼吸不全の中には上気道の異常によって発生するクループ症候群の他に、下気道の異状によって発生するものがあります。中でも大切な疾患がRSウィルス(RSV)感染症です。
RSV感染症は小児に多く見られ、秋から冬に流行する呼吸器感染症です。特に新生児や6か月以内の乳児が罹ると重症の呼吸不全を来す可能性が高くなります。RSV感染症は2歳までにほとんどの小児が感染すると言われます。
潜伏期間は3~5日間で、感染者の鼻汁や分泌物が飛沫や接触感染します。発病後1~2週間はウィルスが排出されます。RSVには何度も罹りますが、年長児が罹った場合には症状は軽くなります。しかし兄弟間でのRSVの感染源になりますから注意が必要です。
RSV感染症は上気道炎、クループ症候群、気管支炎、細気管支炎、肺炎などを起こします。新生児や乳児期早期には細気管支炎を発症して重篤な呼吸不全を起こします。
RSVが細気管支に感染が及ぶと、細気管支の炎症によって浮腫状の腫脹が発生し、ここに粘液の分泌と炎症細胞や壊死細胞などが集積することで、細気管支の通過が悪くなり、その結果、肺胞でのガス交換が出来なくなります。そのために呼吸不全を起こし、低酸素症が発生します。
RSVに対する特異的な治療法はありません。RSVウィルス感染症が重症になるのは新生児や早期産児、先天性心疾患児、ダウン症児や免疫不全児です。これらの小児に対しては特別な注射薬を予防のために使うことが出来ます。