香川県善通寺市の四国こどもとおとなの医療センターの院長を務める。広い敷地に入り、目を引くのは建物を覆う色彩豊かなアートの数々だ。外壁にはハート形の実を付けた大きなクスノキが描かれている。「患者に安心感を与えている。病院をアートで埋め尽くすつもり」
つるぎ町のアートディレクター森合音さん(43)制作の鳥や花の絵が、病院内にあふれる。窓のない手術室には窓を描き、病室には学生や芸術家が描いた300枚の絵画を購入して患者が選んだ絵を飾っている。
前身の香川小児病院で看護師の制服をアニメキャラクターなどをデザインしたものに変えた。「恐怖心から泣きじゃくる子どもの患者は減り、子どもから職員に手を差し出すようになった」
国立病院機構が運営する香川小児病院と善通寺病院が統合し誕生したセンターは医師115人、看護師700人。中四国初の総合周産期母子医療センターとして未熟児や心臓に障害がある患者が治療を受ける。年間4千人が救急車で運び込まれ、時間外の患者は2万人に上る。「患者はもちろん、職員からも病院は選ばれる時代に入った。優秀な医師やスタッフが集まることで患者はより高度な医療を求めて来院してくれる」
正常な脳細胞を傷つけず脳腫瘍を治療する中性子捕捉療法の第一人者。幼い命を救うための向上心は尽きない。「利他の心」を信念とし「人を思いやる大切さを感じながら医療に取り組んでいる」。
丸亀市で妻と2人暮らし。徳島市の実家には両親の墓参りを兼ねて月に1、2回帰っている。「好きなのはやっぱり阿波踊り。ぞめきのリズムを聞くと自然に体が踊り出す」。
なかがわ・よしのぶ 徳島市北矢三町出身。千松小、城西中、城南高を経て1975年徳島大医学部卒業。徳大病院を振り出しに、脳神経外科医として健康保険鳴門病院医長や徳島大医学部講師を歴任した。2003年10月に香川小児病院の院長に就任。13年5月から独立行政法人国立病院機構四国こどもとおとなの医療センター院長。丸亀市在住。65歳。