「日本の伝統構法によって建てられた木造建築物は地震に強い。阪神大震災でも老朽化が進んだものを除けば生き残った」

 その秘密は「粘り」にあるという。伝統構法は、礎石の上に柱を立て、柱に梁や桁を接合する木組みが特長だ。これにより変形性能が高まり、建物にしなやかさがでて、地震で揺れても倒壊を免れやすくなる。

 現職は立命館大衣笠総合研究機構・歴史都市防災研究所(京都市)の教授。伝統構法による木造建築物の耐震化の権威と言われている。

 京都大防災研究所(京都府宇治市)で36年間にわたり勤務した。初めは高層ビルの制震システムなど先進的な分野を研究テーマに据えていたが、阪神大震災を境に変わる。

 「震災では木造建築物の被害が顕著に表れ、多くの人命が奪われた。人命保護が研究者の使命だと痛感した」。木造建築物の耐震化がライフワークとなる。

 研究を進めるうちに、木造建築物の中でも伝統構法によるものが地震に強いことが分かってきた。「どこに秘密があるのか」。理論と実験を通じて要因を分析した。2003年には海陽町にあった古民家で倒壊実験を行った。

 「南海地震に耐えた素晴らしい古民家があった。地元の林業家に協力してもらい、貴重な結果が得られた」。これが一役買い、「粘り」の解明につながった。

 伝統的な木造建築物の耐震診断・耐震補強の方法も考案し、普及に貢献している。

 歴史的に価値の高い建造物の耐震改修にも取り組んでいる。東本願寺(京都市)の御影堂、阿弥陀堂、御影堂門では17年の歳月をかけ、16年に修復を終えた。

 母校は城南高校。「たまに徳島に帰って出会った人が城南出身だと話が弾むね」。 

 すずき・よしゆき 徳島市生まれ。城南高、名古屋工業大建築学科卒。京都大大学院工学研究科博士課程修了。同大防災研究所の助手、助教授、教授を経て2008年3月に定年退職し、京都大名誉教授。同年4月から立命館大グローバル・イノベーション研究機構教授、13年4月から現職。大津市在住。73歳。