徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)
かぜの原因はほとんどがウィルスです。ほとんどのウィルスに対しては治療薬がありません。ウィルス疾患は自身の免疫によってウィルスが排除されることで治ります。早く治療を始めて早く治そうと急いで医療機関を受診しても自身の免疫が働いてウィルスを排除するまで治ることありません。
かぜをひいて医療機関を受診すると症状に応じて色々な薬剤を処方されますが、かぜの治療薬については様々な問題があります。
発熱で受診すると抗生剤や解熱剤が処方されることがあります。しかし抗生剤は細菌に対する治療薬ですからウィルス性疾患である「かぜ」には全く効果はありません。抗生剤を使用するときに、「念のために」とか「細菌感染の予防のために」と言って使用しますが、早く治る等の治療効果はありません。
解熱剤の使用についても睡眠や栄養が取れない、ひどく機嫌が悪い時などに限るべきです。ウィルス疾患の発熱は体内の免疫機能を賦活する大切な役割があり、必要以上に解熱剤を使用することは勧められません。
かぜに伴う咳や鼻水の薬にも注意が必要です。かぜ初期の咳は侵入したウィルスなどの異物を排除する役割があります。鼻水を止める抗ヒスタミン剤は痙攣の閾値を下げて熱性痙攣を起こしやすくなることがあります。
かぜをひいた時には安静、保温、水分や栄養の補給、睡眠に注意して経過観察することが大切です。もちろん、ひどく調子が悪そうな時や苦しそうであれば救急受診が必要な時もあります。子どもの状態を観察してその一般状態を把握することが大切です。