人と対するときは、しっかりと目を合わせ、思いを受け止める。心理カウンセラーとして培った対話力で、学長就任後も「教授や事務職員らと徹底的に話し合い、大学をより良い方向に導きたい」と抱負を語る。
カウンセラーを目指したきっかけは、京都大の学生だった時代にさかのぼる。恩師の河合隼雄名誉教授が、不登校やいじめに苦しむ子どもたちを救おうと心理学を役立てる姿を見て、「これだ」と思った。大学院進学後、早速中高生らのカウンセリングに取り組むが、うまく意思疎通ができずに面談を打ち切られたことも。「まだまだ頭でっかちだった」と振り返る。
転機は不登校の男子高校生との出会い。なかなか心を開こうとしない少年の特技が将棋だと知り、ひたすら将棋を指し続けた。1年がたったころ、少年はぽつりぽつりと心の内を明かし始める。信頼関係を築く難しさと素晴らしさを実感した。
相手の話にじっくりと耳を傾ける姿勢は学内でも評価され、周囲は「難題に自ら飛び込み、解決を目指す行動力を持つ」とみる。今年は鳴教大など全国四つの教育大が連携し、いじめを防ぐ教員教育プロジェクトの立ち上げを主導した。
いじめ防止教育のほか、海外の教員研修、教員再教育の拠点としても存在感を発揮していきたい考えで、「鳴教大ならではの誇れる特徴がいくつも育ってきている。丁寧にその芽を育みたい」と意気込む。
大阪市出身。月1回ほど京都府宇治市に住む娘夫婦の元を訪れ、孫に会うのが何よりの楽しみ。鳴門市撫養町斎田。62歳。