「骨格予算」との位置付けだが、事実上の本格予算と言えるだろう。

 徳島県の2023年度当初予算案である。4月に知事選を控え、県は骨格予算としている。とはいえ一般会計の総額は約5028億円と前年度当初を4%下回ったに過ぎず、4年連続で5千億円を超えた。

 飯泉嘉門知事は知事選への態度を明らかにしていないが、6選出馬が有力視されている。予算案には、新年度も引き続き自身が県政を担うという知事の意思が表れていると言えよう。

 骨格予算は本来、義務的経費や継続事業に絞って編成される。

 知事の就任以来、骨格編成は5度目で、5千億円超えは初めて。本格予算だった20年度当初と同水準だ。

 象徴的なのは投資的経費である。不要不急の公共事業などを含めない骨格予算では前年度比20~30%減となるのが通例だが、4・3%減にとどめている。

 徳島市立文化センター跡などに建設する新ホールと、それに伴うJR牟岐線への新駅建設に関連する事業費が計上されているのも見過ごせない。

 知事選には現在、自民党の元国会議員ら3人が出馬表明している。このうち2人が新駅の中止や新ホールの見直しを訴えている。知事は当初予算段階の計上を見合わせることもできたはずだが、そうしなかった。

 さらには新ホールに関し23年度から4年間にかかる計約198億円を継続費として一括計上した。これは現計画のまま事業を完遂することを意味するものだ。

 公共事業費は4年前の骨格予算に続いて1年間に見込む全額を盛り込み、昨年11月と今年2月の両補正を含む「16カ月予算」は1060億円に膨らんだ。

 財政課は全額計上について「自然災害などに迅速に対応する必要がある」と説明する。ただ「業界の歓心を買うための、選挙前の大盤振る舞いでは」といぶかる向きもある。

 気掛かりな点はまだある。人口減少対策に総額958億円もの予算を重点配分していることだ。

 これまでも人口減少を「国難」と呼んで対策を講じてきたにもかかわらず、成果が上がっていない。知事が2期目の07年に80万人を下回った県人口は、いまや70万人割れが目前である。その検証も反省もないまま予算を増やしても、どれほどの効果が上がるのだろうか。

 飯泉県政20年間で計上した当初予算(23年度を含む)の総額は9兆5千億円に上る。その投資に見合う効果を生み出してきたかどうか。知事の5期目最後の県議会2月定例会で、しっかりと総括すべきである。