目標とする「1県1農協」の実現には至っていないものの、経営基盤を強化するための大きな一歩には違いない。
徳島県内にある全13JAのうち、9JAが来年4月の合併に向けて予備契約を結んだ。来月行われる各JAの臨時総代会で賛同が得られれば、県内最大のJA誕生が正式に決まる。
合併後の新JAの組合員数は約7万人となり、全組合員数の7割を占める。農畜産物の販売高も約199億円と、全国562組合の上位1割に入る。本県農業にとって大きな転機になると言えよう。
統合の最大の狙いは、小規模JAの行き詰まりを防ぐことである。徳島で農業を主な仕事とする人は、この四半世紀でほぼ半減した。65歳以上が7割を超え高齢化の進展も深刻だ。
農林業センサスによれば、2020年の県内農家1戸当たりの経営耕地面積は1・1ヘクタールと全国で8番目に小さい。こうした高齢の小規模農家にとっては依然、JAの支援が必要だ。それには、JAの体力強化が求められる。
本県では全国に先駆けて20年余り前から単一農協化を呼び掛けてきたものの、反対が根強く頓挫を繰り返してきた。
今回もブランド産品を持つなどの強みを持ち「合併のメリットを見通せない」とする徳島市、東とくしま、大津松茂、里浦の4JAが参加を見合わせた。JAが何より追求するのが加盟農家の利益や発展である以上、それぞれの選択は尊重されるべきである。
合併しなくても、農業振興の側面からJA同士の連携は必要だろう。ようやく予備契約にまでこぎ着けたのだから、新JAと4JAはどう協調を図っていくのか、早い時点から探ってもらいたい。
一方、規模が大きくなると、地域の独自性が失われたり、人口や農家の少ない周辺部の農業がおろそかにされたりしないかが懸念される。
3JAを除く12JAが19年に合併したJA高知県では、支所の統廃合などによって早くも地域から「JAとの関わりが薄くなった」との切実な声が上がっている。利便性の低下を嘆く組合員もいるという。
JAを介さない独自の販路を確保する生産者が増え続けている中、地域農業に密着する姿勢を損なえば、ますますJA離れが加速しかねない。
環太平洋連携協定(TPP)や地域的な包括的経済連携(RCEP)の影響が本格化するのもこれからである。本県の農業を再生、活性化させる合併とするためには、具体的な戦略策定が急がれる。