猛暑の中で作業に追われるスダチ農家=神山町神領

 連日の記録的猛暑の中、徳島県内の農畜産物への影響が懸念されている。露地スダチが日照りなどで生育が遅れているほか、乳牛の食欲が低下して搾乳量が減少。暑さに耐えながら作業に追われる生産者からは深刻な悲鳴が上がっている。

 JA名西郡神山センターによると、6日から出荷が始まった露地スダチは7月10日の梅雨明け以降の日照りが影響したためか、通常より多く落果が発生し、例年より生育が5日~1週間程度遅れ、収量も例年の84%となる見込みだという。

 「今年の暑さはこれまでと全然違う。体がまいっている」と話すのは、スダチ農家の阿部陽二さん(71)=神山町神領。長雨や台風で遅れた作業を挽回するため、例年は使っていないパラソルで日陰をつくりながら摘果などの作業に当たっている。高温でも生育を促進させる肥料も初めて散布した。

 9月に定植が始まるイチゴは育苗作業のさなか。約2万2千株の生育指導と管理を担う浅樋いちご農園の浅樋真一さん(42)=徳島市多家良町=は「昼は暑すぎてとても仕事にならない」と嘆く。水分を補給し、1時間おきに休憩しながら水やりなどに励む。

 苗が枯れるなどの生育不良も見られ、その数は300~400株と例年の数十株をはるかに上回る。「しっかり根が張っていれば新たな葉ができる。植え付けまでは様子を見るが、定植後の生育が気掛かり」と言う。

 酪農では牛の食欲が低下し、搾乳量が落ち込んでいる。県酪農業協同組合によると、98戸が約4800頭を飼育する県内の7月の1日平均搾乳量は6月比で約10%減少。昨年7月と比べても6%程度減っている。

 原浅之代表理事組合長(70)は「今年の暑さは災害級。スプリンクラーや送風機を設置するなど、牛舎の遮熱対策はこれ以上できるものがないほど徹底しているが間に合わない」と話す。牛の人工授精の成立も難しくなっており、「繁殖がうまくいかないと来年以降にも響く。年々暑さが増し、先行きが不安だ」と訴えた。

 県農林水産総合技術支援センターは7月20日から、ホームページに「高温時における農作物等の管理対策」を掲載している。担当者は「いつもより高温状況がひどく、品質への影響が懸念される。生産者の体調が何より心配だ」と述べた。