卒業式を経験したことがないんは、幼児だけでないで。保育所の卒業式はあるんかいな? ワイらが幼稚園に通いよった時分に、卒園式があったかどうかは、記憶の彼方のことじゃが…。小学校、中学校、高校、ほれに大学と、卒業式は思い出せば「胸キュン」となるなあ。

 誰でも人それぞれに、口では表現でけんもんがあるもんじゃ。そんな卒業シーズンが来よるな。この頃の卒業式がどないなっとるんか、見学に行って見なんだら何とも言えんんのじゃが、ワイらが心を込めて歌うた「蛍の光」や「仰げば尊し」の唱歌は今、どうなっとんじゃろか。

 卒業式はケジメの時と言うのは、昔も今も変わらんのとちゃうか。日本には春夏秋冬の四季が明確にあるように、冠婚葬祭を共助・共同でこなして、喜怒哀楽もお互いにハッキリさせておる。つまりは「晴れ」と「褻(け)」のケジメをつけたもんじゃ。

 ところがこの頃は、毎日が「盆と正月」みたいになってしもうたな。ケジメがのうなって、食べ物の旬ものうなってしもて、今夜の夕食はカボチャと竹輪の煮付けで、晩酌のアテにされてもうたよ。アッハハハ…。

 ほんでじゃ、親御はん。ほれに教授や教諭の先生はん。卒業式では大声で「ハイッ!」と返事をさせなんだらいかんでよ。入学した時よりも大きく育ち、たくましゅうなった教え子に「仰げば尊し」を歌うてもろて、万感を胸に送り出してあげなはれや。

 この頃は入学試験が難しゅうなって、親御はんも先生も、気苦労なことじゃな。ほなけんど、一人でも多くの子に、志望を叶えさせてやってつかい。失意の者がおっても「まだまだ、これから、これから」と励ましてやんなはれ。

 ほして「卒業式」が思い出深くなるように、心の込もったもんにしたはりなはれ。親と恩師は、永遠に「親と恩師」なんじゃけきな。(今の彦左衛門)

※胸キュン=YMOのヒット曲に「君に、胸キュン。」がある。ボーカルは先日亡くなった高橋幸宏さん ※「晴れ」と「褻(け)=日常と非日常のこと。晴れの代表に「祭り」がある ※のうなって=なくなって