大塚製薬(東京)が7月に発売したポカリスエットの新商品「ポカリスエット アイススラリー」。熱中症を防ぐために体の中心部の「深部体温」に着目し、凍らせても流動性が保たれる独自の組成で「飲める氷」を実現するなど、こだわりの技術が盛り込まれている。熱中症対策の新たな定番になる可能性を秘めた同商品の開発に至った経緯や体温上昇を防ぐ仕組みについて、同社に聞いた。

 大塚製薬は30年以上にわたって様々なシーンでの水分と電解質補給の重要性を啓発している。1992年からはスポーツを安全に行うために熱中症の概念を広め、現在では対象を職場や高齢者らの熱中症対策にまで広げて活動を続けてきた。しかし、消防庁のまとめでは2015~17年の毎年5~9月には全国で依然として5万人以上が熱中症で救急搬送されており、今夏も既に7万人以上が搬送されている。

 「これまでの水分と電解質の補給から一歩踏み込んだ、より積極的な熱中症解決策が必要ではないか」。そう考えた同社の研究者らは約3年前、深部体温に着目した商品の開発に乗り出した。

 アイススラリーとは、細かな氷の粒子が液体に分散した流動性のある氷の総称だ。水に塩分や糖分といった水分子以外の成分が加わると、水分子以外の成分が水分子同士の吸着を阻害し、通常の氷に比べて粒が非常に小さくなって流動性が保たれる。同時に、凝固点が0度以下に下がって冷却効果が高まる。

 

 大塚製薬が新たに発売した「ポカリスエット アイススラリー」

 

 飲食物の中で体温を下げる効果が高いのは氷だが、氷は素早くは飲むことができない。アイススラリーは氷の冷却力を飲料として活用できるため、体を芯から効率よく冷やすことができる。近年、熱中症対策に加え、世界のトップアスリートのパフォーマンス力を高める飲み物としても注目を集めているという。

 同社は試行錯誤を重ね、国内外で長年親しまれているポカリスエット独特の味わいを保ちながら、繰り返し凍らせても流動性が損なわれない組成を実現。一方で、手でもんで押し出すことで手軽に飲めるパウチ状の容器にもこだわった。

 アイススラリーはこれまで、製造に機械を必要とするなど手軽に飲むのは難しいとされてきた。同社は「冷凍庫で4、5時間凍らせるだけでスラリー状となって体を効率よく芯から冷やせ、同時にポカリスエットならではの水分と電解質を補給できる商品は画期的だ」と胸を張る。

 アイススラリー状飲料の熱中症対策における有用性を検証するため、同社は産業医科大(北九州市)、北九州市消防局と共同研究を実施。酷暑の火災現場で長時間活動する必要があり、防火服を着ているため熱を放散しにくい消防士の協力を得て検証を行った。

 検証には、20~30代の健康な消防士12人が参加。防火服を着た状態でアイススラリー状の糖電解質飲料(体重1キロあたり5グラム)か、水または糖電解質飲料を飲んで自転車エルゴメーターをこぐ運動を30分間してもらった。

 

 凍らせた商品を手でもんで押し出すだけで手軽にアイススラリーを飲むことができる

 

 その結果、アイススラリー状の糖電解質飲料を飲んだグループは、水または糖電解質飲料を飲んだグループと比べ、体が内側から冷やされていたことが確認され、熱中症対策に一定の効果があることが実証されたという。

 7月12日に通信販売サイト「オオツカ・プラスワン」で発売したところ、記録的な猛暑の影響もあって多くの注文が殺到している。当面は通販のみで8月末までの限定販売だが、今後の販売方法や時期は改めて検討する。

 同社は「まずは暑い環境で活動する方への提案を行っていく。水分と電解質補給に加え、体を芯から冷やす熱中症対策飲料の新たな選択肢として浸透させていきたい」としている。

 ポカリスエット アイススラリーは100グラム入りで価格は税別180円。サイトでは6~36袋のセットで販売されている。注文はオオツカ・プラスワン https://www.otsuka-plus1.com/shop/