性的搾取の現状などについて講演する藤原代表=徳島市の徳島グランヴィリオホテル

 アダルトビデオ(AV)への出演を強要されるなどした被害者を支援しているNPO法人「ライトハウス」(東京)の藤原志帆子代表が「芸能人・モデルにならない?と言われて—身近にある人身取引について」と題して徳島市の徳島グランヴィリオホテルで講演し、予防教育や支援態勢の必要性を訴えた。要旨は次の通り。

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 15年前から人身取引の被害者支援をしているが、被害の内容が様変わりしている。当時は国内で風俗労働などを強いられた外国人女性を支援していたが、今は日本人被害者が多い。特に、AVへの出演を強要されたという被害が深刻だ。

 昨年1年間に支援したのは138人で、うち88人がAV出演を強要されたケースだった。相談は全員地方在住か出身で、徳島出身者からの相談もあった。男性の被害者も約5%いる。

 進学や遊びで都市部を訪れた地方の女性が狙われている。路上やツイッターなど会員制交流サイト(SNS)上で接触して容姿をほめ、「モデルにならないか」「アイドルに興味はないか」と声を掛けるのが手口。AVプロダクションに誘導され、「性行為を伴うような撮影がある」などと小さく書かれた契約書にサインさせられる。

 「コスプレモデル募集」などとうたう個人サイトを介し、被害に遭ったケースも。運営する男は全国に出張し、面接と称してホテルの一室に女性を誘い込む。入室した時点でカメラは回っていて「体形を見る」などと服を脱がされて撮影されてしまう。

 こうした被害に対し、「高収入目当てだろう」「嫌なら逃げたらいいじゃないか」と思う人もいるかもしれないが被害者は18~23歳くらい。社会経験の不足に付け込み、強要する側は「サインしたのだから、やるしかない」「絶対にばれない」などと言葉巧みに撮影へ持ち込む。大勢の大人に囲まれて恐怖を感じ、個人情報を握られている弱みもあり、逃げられずに応じてしまう。

 出演してしまうと、その動画は半永久的に残り被害者を苦しめ続ける。過去の出演がばれ、就職先を追われたり離婚を突き付けられたり。「本校には良家の子女しかいないから」と、学生の被害者が退学になりかけたこともあった。AV出演者に対する偏見は根強く、「強要被害に遭った」と主張しても社会がそれを許さない。

 では、不幸な被害を出さないためにはどうすればいいのか。まずは教育が大切。大人たちは、性教育はもちろん、労働契約や法律など社会的な知識を全く授けることなく若者を世の中に送り出してしまっている。性ビジネスの実態も含め、しっかりと予防教育をするべきだ。そして何よりも、需要を抑制していくことが効果的だ。

 日本は人身取引対策について国際的な評価が低い。国連にも「児童買春をJKビジネスや援助交際という言葉にすり替え、子どもや若者の性の商品化を容認している」と指摘されている。

 AV強要加害を真正面から裁く法律はなく、有害な職業をあっせんしたとして職業安定法違反などで取り締まったとしても量刑は軽い。例えば200人以上にAV出演を強要したとされる男に、執行猶予付き判決が下されている。

 こうした現状に「ノー」を突き付けることが必要。商品化を許さず子どもの性を守り、被害者にも寄り添うことが重要だ。(2018年8月10日 徳島新聞掲載)=肩書きは当時