イラン核合意から一方的に離脱したトランプ米政権が、再びイランへの制裁を発動した。中東で勢力を伸長するイランの資金源を断つのが最大の狙いだ。

 イランの自動車部門の取引や政府の米ドル現金取引を禁止、第三国の企業も違反すれば対象となる。11月には第2弾として、イランの外貨収入を支える原油取引への制裁も予定している。

 イランでは、米国が離脱を表明した5月以降、通貨の急落などで経済状況が厳しさを増しており、政府の経済政策への抗議デモや対米強硬論が再び台頭し始めている。

 今のところ、米国抜きの核合意にとどまる方針だが、制裁圧力が強まれば離脱する可能性も出てくる。そうなれば中東情勢は一気に流動化し、軍事的緊張が高まろう。

 イラン核合意が存続できるかどうかの正念場である。合意に参加する他の5カ国はもとより、国際社会はイランの残留へ全力を尽くすべきだ。

 制裁についてトランプ大統領は、イランの脅威全体に対処する「新たな合意」を目指していると説明した。

 弾道ミサイル開発やウラン濃縮の完全停止に加え、シリアやイエメンでの武装勢力支援など、地域を不安定化させる活動を変更するまで、段階的に締め付けを強化する考えだという。

 圧倒的な軍事力や経済力をバックにしたトランプ氏の「どう喝外交」は到底、容認できるものではない。核合意に加わる中ロをはじめ、英仏独の欧州勢も反発を強めている。当然だろう。

 制裁によってイラン経済が疲弊し、核合意にとどまる恩恵がなくなれば、核兵器保有に走る恐れもある。

 既に、ウラン濃縮能力の拡大に向けた準備に着手しているほか、原油輸送の要衝ホルムズ海峡で軍事演習を行い、海峡封鎖の力があることも示している。

 対立が激化するのは避けられそうにない。ところが、トランプ氏の関心は11月の中間選挙にあるようだ。

 今回の制裁も、イランを嫌悪する支持層の取り込みをにらみ、外交成果を強調する思惑が透けて見える。独善的な姿勢は一向に変わる様子がなく、失望を禁じ得ない。

 2015年の核合意後、イラン市場に参入した各国企業は制裁再発動の動きを受け、撤退を加速させている。

 イランを核合意にとどまらせるには、経済関係を維持させることが重要だ。

 このため、欧州連合(EU)はイランと取引する欧州企業を保護する対抗策を発動。イランからの原油輸入継続と効果的な金融取引の在り方も検討するようだが、手詰まり感も漂う。

 第2弾の制裁が発動されればイランだけでなく、欧州各国や日本企業にも大きな影響が及ぶ。関係国は11月までに、企業のイラン離れを食い止めるさらなる手だてを探ってもらいたい。