マラソンで自己目標を達成するには、地道な練習はもちろん、忍耐力が問われると思っています。「とくしまマラソン」まで時間がない。今から脚力を鍛えるのは難しい。伸びしろがあるのは心の部分。3月5日に阿波市であった「阿波シティマラソン」に出場しました。
この大会はハーフマラソンです。運営、景色、おもてなし、と満足度はかなり高いのですが、いかんせんコースが難しい。主に阿讃山脈の麓の広域農道沿いを東西に走る21キロ。上り坂、下り坂が大半を占めています。レース中は「苦しい」「きつい」「せこい」「しんどい」のワードが頭の中で運動会。忍耐力を養うには絶好の大会です。
午前10時、市役所庁舎前をスタートです。今回の目標はキロ5分40~50秒のペースで走り、しっかりと余力を残してゴールすること。2週間後のとくしまマラソンを見据えて体力の配分を考えます。本心を言えば、このところ少し疲れ気味。無理は禁物です。
「ふふふ。最初は付いていきますね」。30代の女性記者も参戦しています。2週連続で日曜日に顔を合わせるとは。まさか、これが疲れの原因・・・。いやいや、そんなことはありません。
スタート直後は併走していましたが、500メートルほど進むと、少しずつ私の後方に。「ふっ、ふっ、ふっ」。笑い声ではありません。すでに息が上がりかけて苦しそう。「お、お先にどうぞ」。いじる間もなく自滅です。どうして無理をするの?
おおむね緩やかな5キロの上り坂に続き、1・5キロのきつい下り坂。ペースを落とさないよう踏ん張って坂を上りましたが、下りは斜度がありすぎてスピードが出ません。まぁ、いいや。ペースを保つことが最優先。遠目からフラットな道に見えても近づくにつれて“うねり”を感じます。楽な箇所はない。
精神的に苦しいコースの攻略法は一つです。みんなから元気をもらいながら、粘り強く耐えること。沿道の応援をはじめ、先輩ランナーたちがハイタッチで励ましてくれたり、写真撮影してくれたり。一言二言交わすだけで元気が戻りますね。大会の妙です。
15キロ過ぎから17キロまでは最大の難関、きつい上り坂です。見るだけで吐きそう。周りがほとんど歩き始めました。誘惑に負けそうでしたが、一番の踏ん張りどころ。この日は前半からペースを抑え気味で走ったので思った以上に苦しくはなく、キロ6分40~50秒ほどで淡々、粛々と。残りの4キロはほぼ下り坂のボーナスタイム。でも無理はしません。再び元のペースに戻します。
ラストは調子に乗ってダッシュしましたが、記録は2時間3分。平均ペースはキロ5分50秒で、疲労は少し感じる程度です。ペースを抑えた分、終始余裕を持って止まらずに走り切ることができたと思います。まあ、一定の忍耐力は養えたでしょう。
自宅に帰ると、何やらバタバタ。模様替えをしています。なんてバッドタイミング、心が折れそうです。妻が軽やかな口調で「ちょうどいいところに帰ってきた。2階に運んで」「1階にソファ下ろして」「あ!床に傷が付いとぉ」などなど。空腹でも愚痴をこぼさずに忍び、重労働に耐えます。これも練習と思えば・・・。
大会には子どもたちが走るチャレンジラン・ファミリーランを含め、約650人が参加しました。ハーフマラソンは年齢や性別によって部門が細かく設けられているのも特徴です。
「ふふふ。これ見てください」。後日、職場で女性記者がスマホを片手に近づいてきました。なんと、大会結果で「一般女子30歳以上39歳以下」の部門で上位記録一覧に名前が載っているのです。記録は2時間35分で7位。ちなみに対象者は10人でした。それでも彼女はうれしそう。いや、しらんがな! 心の中で強く叫びましたが、実際に発した言葉は「良かったね」。マラソンも人生も忍耐の連続です。
次は4年ぶりの「とくしまマラソン」。皆さん、楽しみましょう。
◇
矢田諭史(やた・さとし)
12年のとくしまマラソンに初出場。自己ベストは3時間44分(19年のとくしまマラソン)。47都道府県の大会で完走するのが目標。
新居和人(にい・かずと)
17年のとくしまマラソンに初出場。自己ベストは3時間7分(19年加古川マラソン)。今季の目標はサブ3。走り始めてから26キロの減量に成功した。
◇
皆さんの意見や感想をお寄せください。ランナーやチーム、練習方法など取り上げてほしい情報があれば、2人が取材して紹介します。問い合わせは電子メールでnii@topics.or.jpです。
【あわラン】現在連載中。記事一覧はこちら↓
https://www.topics.or.jp/subcategory/あわラン~走る阿呆を、書く阿呆
【記者のマラソン体験記】2019~2021年連載。記事一覧はこちら↓
https://www.topics.or.jp/category/news-original/あわラン~記者のマラソン体験記