阿波踊りや美波町の風土が盛り込まれた創作劇「ひめち」が17~26日、東京都板橋区で上演される。美しい海や山との共存をテーマにした作品だ。阿波弁も効果的に用い、劇団銅鑼(どら)(東京)が人間味豊かなドラマに仕上げている。
物語は、遍路道沿いにある旅館が舞台。地元の人々は自然を愛しながらも道路建設計画を受け入れ、代々受け継がれたミカン山を売り渡すなど地域の宝を手放すことになる。しかし、一人の老人が反対したことを機に、住民たちは地元を見詰め直す。
表題の「ひめち」は沿岸に生息する赤色の海水魚ヒメジの地域名。主人公頼子の亡き夫の好物だった。物語の終盤、ヒメジが久しぶりに取れ、住民たちは未来への希望を抱く。
オープニングは、故人をしのぶ津田の盆踊(ぼにおど)りの幻想的なシーンで始ま
り、続いて阿波踊りが繰り広げられる。かね、しの笛、三味線は演者が舞台で奏でる。出演者のうち7人が、東京の高円寺阿波おどり連協会に所属する「粋(すい)輦(れん)」に10回以上指導を受けるという熱の入れようだ。
住民役のキャスト8人は阿波弁を使い、土地のぬくもりや穏やかな人間性を伝える。日常の時間がゆっくり流れる場所の雰囲気を醸し出した。徳島市民劇場の会員4人が、台本のせりふをボイスレコーダーに吹き込んで送り、阿波弁を指導した。
6月には、出演者が美波町の田井ノ浜や日和佐の食堂を訪ねるなど、名所や町並みを見学して住民と交流を深めた。
劇団銅鑼の制作担当者の平野真弓さんは「実話をヒントに地方の重いテーマを扱っているけれど、阿波踊りや潮騒の音を背景に、ばかばかしいほど明るく、そして切ない物語にできた」とPRしている。
時間は1時間40分。場所は東京都板橋区中台の「銅鑼アトリエ」。問い合わせは劇団銅鑼<電03(3937)1101>。