徳島の夏を彩る「2018徳島市の阿波踊り」(阿波おどり実行委員会主催)が12日、幕を開ける。記録的な猛暑が日本列島を包む平成最後の夏。15日までの4日間、県都は踊り一色に染まり、「踊る阿呆(あほう)」と「見る阿呆」の熱気が街を覆う。開幕前日の11日には「選抜阿波おどり前夜祭」(阿波おどり実行委員会主催)が同市のアスティとくしまであり、有名連の至芸が3公演に来場した県内外の計7000人を魅了した。

 今夏の阿波踊りは、徳島市が発足させた新たな実行委員会によって初めて催される。12日午後5時半から市役所前演舞場で開幕式典があり、実行委員長の遠藤彰良市長が開幕を宣言して本番に入る。

 期間中は市内7カ所に演舞場(有料4カ所、無料3カ所)が設置され、各地に「おどり広場」「おどりロード」も設けられる。今年は曜日配列が悪い上に7月の西日本豪雨の影響もあり、実行委は4日間の人出について昨年の約123万人を下回るとみている。

 選抜阿波おどり前夜祭に出演したのは有名連19連と、三味線グループ「阿波ぞめき渦の会」から選ばれた総勢約600人。第1部は「シャンシャン、シャン」と響く三味線の大合奏で始まった。

 三味線奏者福島俊治さん(70)が率いる渦の会の約70人による円熟の演奏が観客の心を一気につかみ、心浮き立つぞめきのリズムに合わせて、うずき、ゑびす両連の踊り子がエネルギッシュに舞う。名手たちの競演に、客席から拍手が湧き起こった。イタリア出身のデザイナー、ヤコポ・ドラゴさん(27)=京都市=は「どうしても本場の阿波踊りが見たくて徳島に来た」と感激もひとしおの様子。

 第2部は県阿波踊り協会所属の17連が「勇ましく、煌(きら)びやかに」をテーマに、豪華絢爛(けんらん)な群舞で魅了した。勇壮な男踊りにあでやかな女踊り、小粋な女法被踊り・・・。次々とフォーメーションを変え、観客を引き付けた。

 20年ぶりに前夜祭に足を運んだという徳島市の着付師山田千納さん(50)は「選び抜かれた踊り子の一糸乱れぬ演舞に感動した。子どもたちの腰を低く落とした『ちびっ子踊り』は特にかわいらしかった」。

 全出演者によるグランドフィナーレでは、踊り手たちが客席の間に繰り出し、圧巻の乱舞を展開。鉦(かね)、太鼓、三味線の音色に乗って、客席の大人も子どもも浮き立つように「見る阿呆(あほう)」から「踊る阿呆」となり、会場は興奮に包まれた。

 大阪府大東市の会社員橋本路子さん(35)は「自然と体が動き出した」と話し、本番を待ちきれない様子だった。