今に残せし阿波踊り。三味線グループ「阿波ぞめき渦の会」の心地良い音色で幕が上がった。選抜阿波おどり前夜祭、本番を待ちきれない、そんな一人になってステージに拍手を送った
ぞめき三味線のお四国巡り、洗練された踊りにしばし時を忘れる。鳴り物に心が浮き立ち、気持ちも晴れやかに。ルーツは精霊踊り、哀調もある。懐かしいあの人を引き連れてくる
旅立って10年。お鯉さん(本名・多田小餘綾)の<ハアラ エライヤッチャ ヨイヨイヨイヨイ>が思い浮かぶ。阿波よしこのの第一人者、「芸の道に到達点はありません。私もまだまだこれからが正念場です」と述べたのは傘寿の年だった
99歳、県民栄誉賞の受賞祝賀会ではこう語っていた。「いろんなことがあったけど、よしこのが私を支えてくれた。小さな盆踊りが、世界に誇る阿波踊りとして大きく成長したことをうれしく思う」と
無数のげた音と、磨き抜かれた音色が支えてきた。そこには、美しく見せるための練習ではなく、自ら美しくなるための鍛錬があった。前夜祭の余韻が、そう教えてくれる
盆踊りはあまたあるが、阿波踊りは国境を超えた。「身心脱落」、踊れば心身を覆っているものが払われ、軽くなるかもしれない。本番の幕が上がる。4日間、世界に発信するのは、踊りの「輪」「和」である。