阿南市出身の俳人大高翔さん=東京都在住=が特別出演するアートドキュメンタリー「うつろいの時をまとう」(96分)が、25日から東京都渋谷区のシアター・イメージフォーラムで公開される。

映画の一場面:堀畑裕之さん(右)と関口真希子さん(©GROUP GENDAI FILMS CO., LTD.)

 映画は、日本の美意識をコンセプトに、独自のスタイルを発信する服飾ブランド「matohu(まとふ)」を手掛ける服飾デザイナーの堀畑裕之さんと関口真希子さんの視点や哲学を通して、日常の中に潜む美や豊かさを再発見していく内容だ。

 2人の創作は、普段は見過ごしてしまいがちな身近な風景や季節、物などに目を向け、そこから得たインスピレーションを「ことば」に変えることから始まる。その「ことば」は、日本人が長い歴史の中で育んできた「朧(おぼろ)」「粋(いき)」「名残(なごり)」などという美意識。落ち葉の吹き寄せ、ろうそくのほのかな明かりなど、ありふれていながら瞬間ごとにうつろい、二度と同じものが見られない。その抽象的な概念を服という形で表現することにより、着る人の想像力をかき立てる。

映画の一場面(©GROUP GENDAI FILMS CO., LTD.)
映画の一場面(©GROUP GENDAI FILMS CO., LTD.)

 監督は、伝統芸能をテーマにコミュニケーションと身体のありようを描いてきた三宅流さんが務めた。堀畑さんと関口さんの哲学に共感する文化人のコメントも交え、その創作の源泉をひもといていく。

 大高さんはその文化人の一人として特別出演。「matohu」との出会いを「30代初めのある日、matohuの服に出会った瞬間を今も覚えている。『ずっと探していたもの』を見つけたという喜びは、『ずっと信じられるもの』を見つけたという安堵(あんど)でもあった」と話し、海外で行った俳句のワークショップの際に「matohu」の服を着て参加した理由などを語る。

 映画については「いつもの毎日をどう過ごせば、心豊かな人生となるのか。今の自分にもできることに、はっと気づかされる。自然体ながらも覚悟をもった真摯(しんし)な『ものづくり』に、背を正される映画」とアピールしている。(植田充輝)

 

『うつろいの時をまとう』

2023年3月25日(土)シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

監督:三宅流  撮影:加藤孝信  整音・音響効果:高木創  音楽:渋谷牧人  プロデューサー:藤田功一

出演:堀畑裕之(matohu)、関口真希子(matohu)、赤木明登、津村禮次郎、大高翔ほか

【2022年/日本/ 96分/ カラー/DCP/5.1ch/バリアフリー上映対応】
協力:一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構、PEACH
助成:日本芸術文化振興会
製作・配給:グループ現代