新型コロナウイルスの影響で中止が続いていた「とくしまマラソン」が、あす4年ぶりに開かれる。

 吉野川の北岸と南岸を巡る定番コースで、通算13回目となる。市民ランナーら6928人がエントリーしている。感染対策でコロナ禍前より規模を縮小したため、前回の参加1万2800人から大幅に減った。それでも第4回大会までの参加者数を上回っている。

 「完走する」「自己ベストを目指す」「上位を狙う」など目標はそれぞれ異なっても、元気に参加できる喜びは同じだ。無理をせず、自分に適したペースで楽しもう。

 徳島の春の風物詩として定着していたビッグイベントだ。半数強が県外ランナーとあって、再開に伴う経済効果にも期待が募る。

 多くの市民ランナーが参加するマラソン大会と感染対策の両立は「ウィズコロナ」の象徴となろう。その意味でも開催にこぎつけた意義は大きい。

 県内のコロナ感染は落ち着いている。とはいえ、油断は禁物だ。

 大会ではさまざまなコロナ対策を講じており、ランナーには1週間前から健康状態をチェックすることや、スタート前のマスク着用を求めている。

 スタート地点は特に密状態を避けるのが難しい。高齢のランナーも多いだけに、混乱を招かない対応が肝心である。

 今回も4千人を超えるスタッフやボランティアが大会を支えてくれるのは心強い。数あるマラソン大会の中でも、お接待の文化に根差した郷土色豊かな応援や飲食のもてなしは、すっかり名物となっている。

 感染対策のため沿道では声援を控え、拍手やポーズで応援しなければならないのは残念だ。支障のない範囲でランナーを励ましてもらいたい。

 障害者の活躍も注目である。視覚障害者らでつくる「阿波を共に走る会」は、過去最多の6人が伴走者と一緒に出場する。全員完走を目指すという頑張りにはエールを送りたくなる。

 もう一つは、初開催の車いすロードレースだ。マラソンに先立ってスタートし、高低差が10メートル近くある3・5キロを走る。東京マラソンなど他の大会ではおなじみだが、初めて目の当たりにする人が多いのではないか。

 出場予定8人のうち、吉野川市の工藤金次郎さんは96歳、全国最高齢の車いすマラソンランナーである。「距離を延ばすなど、もっとチャレンジさせてもらえたらうれしい」と挑戦する姿勢には勇気づけられる。

 多様性を認める共生社会を、関わる人全てが実感する復活大会としたい。