有名連の連員たちと一緒になって、阿波踊りを楽しむ観客ら=藍場浜演舞場

 熟練の踊りと鳴り物による熱狂の渦が、観客をのみ込んだ。12日開幕した「徳島市の阿波踊り」(阿波おどり実行委員会主催)。有料4演舞場の2部フィナーレでは初めての取り組みとして、複数の有名連が立て続けにお目見えした。長年かけて磨き上げた「見せる踊り」のオンパレード。最後は桟敷から有名連の乱舞の輪に加わり、“踊る阿呆(あほう)”を心ゆくまで堪能した。

 「さあ、有名連5連がフィナーレを飾ります」。午後10時、藍場浜演舞場にアナウンスが流れ、殿様連が先陣を切って姿を現した。

 しとやかな女踊りと豪快な暴れ踊りが織りなす、静と動のコントラスト。神髄ここにあり、とばかりに阿波踊りの魅力を凝縮した群舞に、観客はのっけから酔いしれる。演舞場をひときわ大きな拍手と喝采が包み込んだ。

 神戸市から家族5人で訪れた会社員奥原紅(くれない)さん(28)は「さすが有名連。キレと個性があってとにかくすごい。歴史を感じる」と感激しきり。

 独創的なリズムを刻む金長連が続き、阿波扇もお家芸の扇の舞で盛り上げる。うずき連は、ゆったりした「粋調(すいちょう)」と呼ばれるお囃子(はやし)と、よしこのの美声に乗せて一糸乱れぬ踊りを披露。トリを務めたほんま連は女法被踊りの集団美で魅了した。

 「阿波踊りといってもいろいろあるんですね。それぞれ味があって趣深い」。大阪市の会社員野田真二郎さん(36)は、満足そうな表情を見せた。

約30分間の5連の演舞が終わり、誰もが「終演」と思ったその時だった。

 「皆さん、一緒に踊りましょう」。桟敷の誘導員が促し、観客が次々になだれ込んだ。先頭で踊り込んでいた殿様連が列の最後尾に回り込み、踊り子と観客がとけ合う。幾重にも重なる乱舞の輪。「ヤットサー、ヤットサー」と全員が天に腕を突き上げ、満面の笑顔を浮かべて踊り天国を楽しんだ。

 夫婦で踊り込んだ東京都の自営業野﨑安希子さん(53)は「最高です。心臓が震えました」。川崎市の会社員遠藤隆之さん(38)も「こんな演出があるなんて。めちゃくちゃ楽しい」と汗だくになって破顔した。