政府、自民党は2020年東京五輪・パラリンピックの暑さ対策として、夏の期間限定で日本の標準時間を2時間程度早める「サマータイム制度」導入の可否について検討を始めた。

 今夏の記録的な猛暑を考えると、マラソンや競歩といった屋外競技に出場する選手を中心に、観客やスタッフの健康対策は急務の事態だ。

 とはいえ、全国一律で時計の針を早めるサマータイム制度の導入は、国民生活に大きな影響を及ぼす。検討する期間も限られているだけに、現実を踏まえた冷静かつ慎重な判断が欠かせない。

 2年後の東京五輪に間に合わせるには、今秋の臨時国会に関連法案を提出し、来年夏には試験的に制度を導入してスムーズに夏時間に移行できるかどうか、対応を見極めなければならない。

 しかし、来年5月には新天皇の即位に伴う新元号への移行が予定されている。さらに10月には、消費税率の10%への引き上げと軽減税率の導入が控える。そうした中で、夏時間の試験的な実施が可能かどうか。甚だ疑問である。

 サマータイムは、デイライト・セービング・タイム(日光節約時間)とも呼ばれ、米国やカナダ、欧州などで広く実施されている制度だ。

 早朝の比較的涼しい時間に社会活動を始めれば、エアコンや照明などの省エネ効果が見込めるほか、交通事故や犯罪の防止、減少といったメリットも期待できるという。

 明るい時間帯の支出が増えるなど個人消費が押し上げられ、年7000億円の経済効果が見込めるとした民間研究機関の試算もある。

 ただインターネット通販の普及など、24時間どこにいても買い物ができる環境も整ってきた。どれだけの経済的な効果があるかは、制度を導入してみないと分からないのが実情だろう。

 一方で、鉄道や航空機の時間表変更のほか、コンピューターシステムの改修など、多額のコストと負担が生じることも忘れてはならない。

 官民の働き方改革が進んでいなければ、長時間労働を助長するとの指摘もある。国民の睡眠不足と体調不良を招くとした反対論も根強い。

 いずれにせよ、制度導入にどれだけの経費が必要で、どのようなメリットとデメリットがあるのか。課題を解決する方策は見いだせているのか。政府、自民党はそうした点をしっかりと説明し、国民の理解を得た上で結論を出さなければならない。

 北海道から沖縄まで日本列島は南北に長い。夏時間を導入した際の影響は、地域によってさまざまだろう。自治体も独自に課題を検証し、国に提言すべきだ。

 大会組織委員会が主張するように、省エネ効果が見込まれる夏時間の導入を「低炭素社会」の実現に向けた契機にするのなら、恒久的な制度として、時間をかけて可否を検討してもらいたい。