12日に開幕した徳島市の阿波踊りには毎年県外から多くの観光客が訪れている。どこから来ているのか。県外ナンバー車を対象に無料開放される県庁来庁者用駐車場で、夕刊編集部がナンバーを調べたところ、京阪神や四国など近隣が中心を占める一方、北海道や関東、九州など多方面から訪れていた。全国から多くの人を引き付けている一端が浮き彫りになり、阿波踊り人気の高さをあらためてうかがわせた。 

 12日は一般の来庁者がいない日曜日のため、午前10時から開放された。各演舞場で上演が始まる1時間前の午後5時から同6時にかけ、駐車していた227台(出入りあり)のナンバーの地名を集計した«別表»。

 全部で34都道府県の54のナンバーが確認された。最も多かったのは「神戸」で42台。井上晴康さん(43)=神戸市、自営業=は家族4人で訪れた。5年ほど前から見に来ており「6歳の長男と4歳の長女が毎年にわか連で踊っている。今年も楽しんでいた」と話した。

 神戸に次いで「香川」24台、「愛媛」11台と四国内が続いた。「大阪」と「岡山」が9台ずつなど、京阪神や中国地方が上位に並んだ。

 「サーフィンが好きで徳島にはよく来ているので、踊りも一度は見たかった」と話したのは、「なにわ」(大阪府)の三宅なつえさん(49)=大阪市、自営業。南内町演舞場で観賞し「生の迫力があった」と感激していた。「広島」の平野雄大さん(32)=広島県廿日市市、公務員=は、阿南市出身の妻彩さん(30)の里帰りに合わせて初めて踊りを見た。「演舞場以外の街角でも自然と踊りの輪ができていて楽しかった」

 「足立」(東京都)や「横浜」など関東地方も目立った。「多摩」(東京都)の土井良一さん(51)=東京都稲城市、会社員=は徳島市出身。息子の猛さん(22)と帰省した。写真撮影が趣味で、関東の阿波踊りをよく撮影しているものの「本場の有名連の踊りは整然として美しく、レベルが違う」と満足そうに語った。

 「演舞場の近くで無料で止められるのはありがたい」。「とちぎ」の江連英雄さん(64)=栃木市、会社員=は、妻初枝さん(64)とともにキャンピングカーで徳島入り。見物を終えた2人は「見せるだけではなく踊り子自身が喜んで踊っているように見える。見ている方も楽しい気分になる」

 「松本」(長野県)の高比良篤さん(50)=長野県松本市、会社員=は、次女で小学2年の結衣さん(7)を乗せ約15時間かけて来た。8年ほど前から毎年訪れる熱心なファンで「各連の踊りの内容が毎年少しずつ異なり、今年も工夫をうかがわせた。踊り子の魂を感じる」と堪能した様子だった。

 最北は「札幌」、最南は「鹿児島」だった。鹿児島在住時代に購入した軽ワゴン車を1人で運転して来た冨吉武尚さん(76)=宮崎県西都市=は、2年連続の来県。「にぎやかなのがいい。車で来られるのは体力的に今年が最後かもしれないが、来年以降も飛行機などを使って来たい」と声を弾ませ、次の旅行目的地の兵庫県姫路市に向かった。

 県庁来庁者用駐車場は1988年から毎年開放されている。県観光政策課は「全国各地から多くの方に足を運んでいただき、大変喜ばしい」としている。

 駐車場は14、15両日も午後6~11時に開放される。