半世紀近く続いたラジオの長寿番組「秋山ちえ子の談話室」が終了して16年になる。評論家の秋山ちえ子さんが時事問題から家庭のちょっとした話題まで、ありとあらゆるテーマについて語り、締めは必ずこの一言。「それでは皆さま、ごきげんよう」

 しなよく、美しい言葉遣いを毎朝聞けなくなったが、8月のこの時期だけ、今でもラジオから秋山さんの声が流れてくる。代名詞ともなっている童話「かわいそうなぞう」の朗読である

 戦時中、東京の上野動物園で餓死させられた3頭の象にまつわる悲しい実話。毎年、終戦の日の「談話室」で紹介した。秋山さんにとって、この童話の朗読は特別だったようだ。番組が終わってからも終戦の日に合わせ、別の放送枠で読み上げてきた

 小学2年生向けの内容だという。それでも秋山さんはひとしきり読み終えた後、突き刺すような言葉を添えることがあった。「戦争はなんと惨めでしょう。なんと愚かでしょう」。怒りが静かに煮えたぎっていた

 秋山さんは2年前に鬼籍に入ったものの、過去に収録した音声が放送されている。「リクエストがやまない」とTBSラジオの担当者。今年は少し早く、11日に流れた

 終戦から73年。そのほぼ3分の2の長きにわたって続く、魂の朗読。不戦を願った秋山さんの信念を忘れまい、と胸に畳む。