大勢の見物客で騒然とする中、演舞場外で「総踊り」を強行する阿波おどり振興協会の踊り子ら=13日午後10時半ごろ、徳島市

 阿波おどり振興協会の「総踊り」強行という異例の展開となり、全国の注目を集めた徳島市の阿波踊り(12~15日)が閉幕した。4日間の人出は昨年より15万人少ない108万人。雨天中止日のあった年を除き、記録が残る1974年以降では最も少なかった。主催者の阿波おどり実行委員会(委員長・遠藤彰良市長)と、有名連14連が所属する振興協会の対立と混乱がイメージ悪化を招き、客足を遠のかせる要因となったようだ。

 長引く混乱がピークに達したのは13日夜だった。「雑踏事故を招きかねない」と懸念する実行委の再三の自粛要請を無視し、振興協会が千人以上での総踊りを強行。紺屋町の県道交差点から両国橋南詰めまで、約150メートルを踊り抜いた。

 周辺は詰め掛けた大勢の見物客で騒然となり、総踊りの人気ぶりを裏付けた。

 実行委による総踊り中止の方針は、ボディーブローとなって、人出などに影響を及ぼした。テレビ報道などを通して全国に伝わったが、「阿波踊り自体が中止される、と誤解するファンも多かったのでは」と実行委事務局は分析する。

 「総踊り」に代わる試みとして実施された「複数の有名連によるフィナーレ」も、一部で不満の声が聞かれるなど来年以降の演出に課題を残した。

 「フィナーレといっても、どこででも見られる踊りと同じ。もっと工夫がほしかった」。数年前から総踊りのファンという乾久留美さん(41)=阿波市阿波町東条、ピアノ講師=は不満を口にした。

 4カ所の有料演舞場での増収を目指したが、例年なら総踊り見たさに満席になる人気の南内町演舞場も、この夏は4日間とも空席が目立った。

 阿波踊りを巡っては、昨年までの主催団体の一つで、経理を担当していた市観光協会(破産手続き中)が多額の累積赤字を抱えていたことが問題となり、今年3月に市が破産を申し立てた。振興協会の山田実理事長は、観光協会の理事も兼務していた。

 実行委は今後、振興協会との関係改善を含めて、今年の阿波踊りの運営について検証することにしている。