日米間で浮上してきた貿易摩擦をどう回避するのか。安倍政権の通商政策が試される局面を迎えた。

 日米両政府は新たな閣僚級貿易協議を開催したが、議論は平行線で、結論を9月の次回会合以降に持ち越した。

 今回の協議で、トランプ米政権は、自由貿易協定(FTA)を念頭に日本に2国間交渉を求めた。7兆円超に上る対日貿易赤字を問題視しており、農業などの市場開放を迫る構えだ。

 一方、日本は、環太平洋連携協定(TPP)に米国が復帰することが双方にとって最善だという立場を強調した。

 日本が米国抜きの11カ国によるTPPを主導してきただけに、重要性を主張するのは当然だ。

 ただ、北朝鮮や中国との緊張が続く状況で、貿易摩擦によって米国との関係がぎくしゃくするのも困る。

 日本としては、そうした立場への理解を求めながら、着地点を見いだす努力が必要である。

 トランプ大統領は11月の中間選挙をにらみ、目に見える成果を狙っているようだ。自動車に追加関税を課すことを検討しており、中間選挙前に発動する可能性もある。

 日本経済をけん引する自動車に、追加関税が発動されれば、大打撃である。景気の腰折れを招きかねない。

 現在、日本の自動車関税はゼロで、米国の2・5%よりも低い。それなのに、米国が日本車に、追加関税を課すのは不公平である。日本車を適用対象から外すべきだ。

 日本は今回の協議で、日本車を対象から外すことに期待したが、米国から色よい返事は得られなかったようだ。

 それにしても、中間選挙を控えたトランプ政権の国内的事情によって、関税など貿易の条件が左右されるというのは、あまりにも理不尽ではないか。

 米国内では、日本に畜産市場の開放を求める声も強まっている。日本と欧州連合(EU)が日欧経済連携協定(EPA)に署名したことで、米国の農家が関税面で不利な立場になるという事情もある。

 日欧EPAでは、世界の国内総生産(GDP)の約3割を占める巨大な経済圏が誕生する。

 トランプ氏は2国間協定で米国の利益を追うのではなく、巨大経済圏が生み出す長期的なスケールメリットに、目を向けてもらいたい。

 米国がTPPに復帰すれば、環太平洋地域に世界のGDPの約4割を占める大市場が誕生する。その経済効果は計り知れない。

 日米貿易摩擦を巡って、日本には苦い経験がある。1980~90年代の半導体交渉などでは米国が制裁関税を持ち出し、日本は外国製品の市場シェアを拡大する目標をのまされた。

 今回も、日本は最後には腰砕けになるとの見方もある。そんな懸念を払拭(ふっしょく)する交渉を求める。