少し悪ふざけな小説があってもいいかな、と思って応募した。第1回の阿波しらさぎ文学賞を受賞したことを喜び、「知らせを受けたときは安心した」と笑顔を見せる。
受賞作「青は藍より藍より青」は、鳴門海峡の町が舞台。藍染の復活を目指す民俗学者が唯一の弟子ロバートとの対話を通じ、不思議な空間世界を描く。
淡路島出身のフリーライター。しかし、徳島には少年時代に2度しか訪れたことがない。
一度はキャンプ、もう一度は藍染体験だった。「作品に徳島をテーマに盛り込むことが応募の条件」と聞いて、まず思い浮かんだのが藍染だった。主人公の名前は「縹(はなだ)」で、娘は「浅葱(あさぎ)」。弟子の名は「ジャパン・ブルー」の言葉の生みの親である英国人にちなむ。
京都大大学院時代は物理を専攻し、この小説の中に豊富な知識を盛り込んだ。このため、難解な言葉が多く、一読するだけでは理解しづらい展開もあるが「疑似的な徳島の像を立ち上げただけ」と、さらりと言ってのける。
小説を書き始めた8年ほど前、芥川賞作家の川上未映子さんの散文詩集を読んで衝撃を受けた。「文章ってこんなに自由に書いていいんだ」と。好きな作家は仏のシモンやロブグリエ。認識と物語が混在する世界観が刺激的に思え、「小説ってどのように書けばいいんだろうと、いつも考えている」。
普段はウエブサイトを中心に文芸批評や書評などを執筆している。神戸市で妻(31)と2歳7カ月の長男との3人暮らし。31歳。