白河の関は古代、福島県と栃木県の国境に置かれていたとされる関所である。いつの頃からか「白河の関越え」という言葉が、高校野球に定着した。東北6県がいまだ全国制覇していないことから、甲子園の優勝旗を東北に持ち帰る悲願を言い表している
この夏もあと一歩及ばなかった。昨日の第100回選手権決勝。劇的な逆転試合の連続で大会終盤の話題をさらった秋田の金足農が、北大阪の大阪桐蔭に敗れた
東北勢初の優勝か、はたまた史上初2度目の春夏連覇か。どちらに転んでも倍加の快挙だったが、こういう情勢では判官びいきが生じるもの。各地で「関を越えよ」の声援が勝っていたことだろう
秋田の盛り上がりは、上を下への状態だったようだ。地元の秋田魁新報は、決勝進出を決めた時点で号外を街頭で配布。JALは大阪・伊丹空港への臨時便を運航し、ほぼ満席だったという
秋田の県立高は決勝の日が2学期の始業日だったが、金足農は2日延期した。なにせ県勢の決勝進出は第1回以来、103年ぶりのこと。粋な計らいにあふれ、県が一体となった
秋田の熱狂ぶりに、36年前の池高フィーバーを重ねた人は多かろう。豪快で胸がすく「やまびこ打線」に沸いた、あの時。郷愁に駆られるだけでは・・・。白河の関を越える前に再び、と望みが膨らんで仕方がない。