アカウミガメの産卵地として国天然記念物に指定されている大浜海岸(美波町日和佐浦)の今季の産卵がゼロだった。記録が残る1967年以降、産卵がなかったのは初めて。産卵シーズンに砂浜への立ち入りを禁止する保護規制期間(21日午前0時まで)の上陸数も6月の1回だけで、過去最少だった。専門家は、砂の流出や人工の光の影響を指摘している。
大浜海岸では例年、5月下旬~6月上旬にアカウミガメの初産卵があり、その後ピークを迎えている。しかし今季は6月14日に初上陸があったものの、産卵しなかった。それ以降は上陸も産卵も確認できていない。
産卵回数は1990年の161回をピークに徐々に減少。これまで最も少なかったのは2006年と16年の2回だった。
過去10年で保護規制期間終了後に産卵したのは14年(8月23日)だけ。9月に上陸した年はなく、今季の産卵はほぼ見込めない状況となっている。
大浜海岸でアカウミガメの上陸、産卵を調査している町立日和佐うみがめ博物館カレッタ(同町日和佐浦)の田中宇輝(ひろき)学芸員は「5月のしけで砂が流出したのに加え、産卵に悪影響を与える人工の光を減らす対策が十分でない、といった理由が考えられる。今後も産卵のない年が出てくるかもしれない」と懸念を示している。
大浜海岸は1967年、アカウミガメの産卵地として全国で初めて国天然記念物に指定された。上陸数は68年の308匹をピークに、96年に34匹となって以降は2桁に低迷。産卵シーズンに当たる5月20日から砂浜への立ち入りと堤防沿い道路の車両通行を禁止し、午後8時~午前4時に町ウミガメ保護監視員が上陸を観察している。