徳島にゆかりのあるアーティストが出演するライブイベント「若者たち2023―天弓―」が4日、徳島市中心部にある3つのライブハウスを会場に、4年ぶりのサーキット形式で開かれた。ロックバンドから弾き語りまで多彩なジャンルの16組が熱演し、大勢の音楽ファンが詰め掛けた。
徳島を中心に精力的に活動している4人組のポップバンド「以津真天(いつまで)」が、「徳島club GRINDHOUSE(クラブ・グラインドハウス)」(秋田町2)でオープニングを飾った。
リズミカルに手拍子をたたく新曲「竜舌蘭(りゅうぜつらん)」など8曲を披露。しっとりしつつも激しいロック調の、緩急のあるライブを繰り広げた。ベースの掛水颯太さん(26)は「コロナも落ち着き、以前来ていたお客さんや初めて来る若い子たちもいてうれしかった。次回の若者たち開催に向けて、これからも精力的に活動していきたい」と意気込む。
「HOTROD(ホットロッド)」(栄町1)で熱さあふれる音を響かせたのは、学生スリーピースロックバンド「SLOTH-SHUTTLE(スロースシャトル)」。ドラムの山下尚人さん(21)=阿南高専専攻科2年=は「結成時から目標にしていたライブに出演でき、憧れのバンドの方が拳を上げて乗ってくれているのを見て対等になれたようで、うれしい」と喜びを語った。青春の日々を忘れるなというロックパンク調の「青い唄」から始まり、観客も一緒に口ずさめる「ロックンロールフォーエバー」など怒濤(どとう)の8曲を熱唱した。
オルタナティブロックバンドの4人組「HEIRA(ヘイラ)」もホットロッドから届けた。メンバーのうち2人は以津真天も兼任しているが、全く異なるテイストで会場を圧倒。暗めのもの悲しいメロディーの中に、情緒豊かな雰囲気を織り交ぜて独特の世界観を表現した。MCでは、脱退したメンバーの名前を付けていた曲を「地獄」に改名したと話して会場の笑いを誘い、最後の曲として披露した。
「白い朝に咲く」は、徳島でのライブが6年ぶり。出演したグラインドハウスには、これまで共に歩んできたバンド仲間も集まった。はかなくも力強さのあるボーカルの河野多恵さんの歌声が響き渡り、最後は10年間バンドをやってきた中で出会った全ての人にささぐと、「LOVE YOU FOREVER」で締めくくった。
ラスト前に、「FIGHT CLUB(ファイトクラブ)」(秋田町2)では、「もね助」こと矢部萌音さん(23)が、ギターの弾き語りで、真っすぐでパワフルな歌声を披露した。「コロナ禍で不安だったけど、ライブを通じて徳島をずっと守ってくれている先人の存在を改めて感じ、心がぐっときた」と矢部さん。MCでは地元・徳島で音楽を続けていく思いを語り、新曲「贅沢な街」を含む6曲を歌い上げた。
グラインドハウスでのラストには、4人組のポップロックバンド「LaughTONIC(ラフトニック)」が登場。ストレートにぶつける言葉や激しく頭で刻むリズム、観客を巻き込む力強さのあるパフォーマンスが印象的だった。観客同士で肩を組み交わし、拳を突き上げ、会場が一体となる盛り上がりを見せた。
コロナ禍で中断していたサーキット形式での開催が復活した「若者たち」。観客は好きなアーティストをじっくり楽しんだり、会場を回って余すところなく制覇したりと、思い思いに満喫していた。アーティストも20代を中心に幅広い年代がそろい、これからを引っ張っていく世代と、これまでを築き上げてきた世代が刺激を受け合い、徳島の音楽シーンを彩った。
主催したグラインドハウス店長の長谷川洋星(ひろし)さんは「自分の中の目指すべき場所を想うと、まだまだ満足できない部分も多いが、お客さんや出演者の表情を見たら、『やって良かった』『これからもこういう時間を作っていきたい』という気持ちでいっぱい。本当に小さな最初の一歩を踏み出したばかり。これを機に皆さんと歩み出していきたい」と語る。(日下彩)