2019年夏の参院選「徳島・高知」選挙区の自民党の候補者調整が、党本部が求める9月上旬の決定から遅れる可能性が出ている。ともに再選を目指す現職を抱える徳島、高知両県連が選挙区での出馬を主張し、譲る気配がないためだ。選挙区で立候補できない現職を比例代表で救済する改正公選法が成立したことから、当初は楽観論もあったものの、決着への道筋はまだ見えない。
 
 次期参院選で、徳島側は三木亨氏(51)、高知側は高野光二郎氏(43)が改選を迎える。どちらが選挙区から出馬するのかについて、両県連は8月上旬に党本部の指示を受け、協議を本格化させた。

 徳島県連側は調整が難航する事態は避けられると当初はみていた。改正公選法により、比例に回った候補を拘束名簿式の「特定枠」で当選圏内に登載でき、制度上は両県の候補が共に当選できる仕組みになったことで、高知側が選挙区での擁立に強くこだわらないのではとみていたためだ。しかし今、徳島県連の山口俊一会長は「高知の県民感情が予想していたよりも厳しい」と言い、やや見方を変えている。

 合区が導入された前回参院選は、高知に現職がおらず、党本部の裁定で徳島の現職中西祐介氏が選挙区から出馬。高知が擁立した新人中西哲氏が比例代表に回った。

 このため、高知側には「次回こそ選挙区には高知から候補を出したい」との思いが強い。高知県連の梶原大介幹事長は「前回は祐介氏を高知として全力で応援した。次回は、との思いは高知の県民や党員にとって自然なことだ」と強調する。

 これに対し、徳島県連側も「選挙区候補を交代で出すという約束はしていない」「祐介氏と三木氏の選挙は全く別のもの。前回は現職が徳島にしかいなかった」と、三木氏の選挙区への出馬を求める構えを崩していない。

 選挙区へのこだわりについて、両県連は「選挙で有権者に名前を書いてもらい、当選したいというのが候補者共通の思いだ」という。

 徳島県連側が三木氏を推すのは「勝てる候補」を基準にすべきだということもある。野党が前回参院選のように統一候補を擁立し、共闘すれば厳しい選挙も予想される。5年前の参院選では高知の高野氏の得票と、当時の民主党と共産党の2候補の合計得票の差は2万1千票余だったのに対し、三木氏は民主、共産両党の合計得票に5万9千票近い差をつけて当選している。

 とはいえ、強硬に三木氏を推して高知側の反感を買うのは、選挙を考えれば得策ではない。選挙戦での共闘に向けて”しこり“を残す事態は避けたいのが両県連の共通認識だ。徳島県連の嘉見博之幹事長は「高知側と丁寧に話し合い、信頼関係を持って選挙戦に臨めるよう努めたい」としている。