日清食品の創業者・故安藤百福(ももふく)さんは、戦後の混乱のあおりで全財産を失った。残ったのは住居だけ。どん底の状況だったが両足を踏ん張りこう確信したそうだ。「絶対的な不幸な状況でも、最後まで食は残る」
ちょうど20年前、本紙の横顔記事が伝えている。開発のよりどころとしたのが「食足世平(しょくそくせへい)」の理念だった。まだ国中が食糧不足にあえいでいた頃。食が足りてこそ世の中が平和になる、と
即席麺の元祖「チキンラーメン」は安藤さんの熱情が原動力となり、1958年に世に出た。きょう8月25日で60周年。還暦である
一体どれだけの食卓で朝昼晩の主食になってきただろう。おやつ代わりの間食にもよし。理念通り、おびただしい胃袋を満たしてきたはずだ。大阪府池田市に本部を置く世界ラーメン協会の推計では、即席麺の世界需要は昨年初めて千億食を超えた
「すぐおいしい、すごくおいしい」に追い付き追い越せと生まれ、流通している銘柄は1600近く。即席麺は、もはや国民食ならぬ「地球食」と言えよう。安藤さんならこの先、どう進化させようとしただろうか
ちなみに、徳島製粉の「金ちゃんラーメン」は誕生から51年。世界初のレトルトカレーは大塚食品の「ボンカレー」で、販売50周年になる。徳島発の誇れる即席食品も忘れずに、と書き添えておく。