[上]県などがユネスコ記憶遺産登録を目指すドイツ橋=鳴門市大麻町[下]ユネスコ記憶遺産に申請を予定しているアジア初演となった「第九」演奏会のプログラム(鳴門市ドイツ館提供)

 徳島県と鳴門市は、ドイツとの交流の歴史を刻む板東俘虜収容所(鳴門市大麻町)に関する資料の国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界記憶遺産への登録を目指し、2016年から申請作業を始める。アジア初演のベートーベン「第九交響曲」プログラムなど、世紀を越えて大切に残された資料の調査・研究や申請書の作成を進め、18年に申請、19年に登録の可否を仰ぐ計画。ドイツとの共同申請も視野に入れ、連携を図りたい考えだ。

 県教委によると、ユネスコへの申請を想定している板東俘虜収容所の関係資料は、08年に県有形文化財に指定された市ドイツ館所蔵の歴史資料298点。「第九」プログラムのほか、収容所新聞「ディ・バラッケ」や楽曲解説書などが含まれている。

 捕虜が制作した大谷焼や地元住民らとの交流の様子が分かる写真、捕虜が建設したドイツ橋、めがね橋といった構造物も申請対象として検討していく。

 県と鳴門市は今年3月末までに有識者で構成する「記憶遺産登録調査検討会(仮称)」を設置。検討会の助言を受けながら、資料の絞り込みと申請書の作成を始める。

 ユネスコには県と市の連名で申請する予定だが2カ国以上での共同申請も可能なことから、県が友好提携を結ぶニーダーザクセン州、市の姉妹都市リューネブルク市との連携も検討。ドイツ側の視点も加え登録実現につなげたい考え。

 17年は収容所開設100周年やニーダーザクセン州との提携10周年。ユネスコ申請を予定する18年は「第九」アジア初演100周年を迎え、収容所をめぐる節目の年となる。

 県教委教育文化政策課と市文化交流推進課は「国内外での話題性を高め観光・経済への相乗効果が発揮できるよう取り組みを進めたい」としている。

 板東俘虜収容所は第1次世界大戦期の1917年4月から3年間設置され約1千人のドイツ兵が収容された。ドイツ兵への待遇は人道的で日本とドイツとの交流の礎となった。

 神戸大の岩井正浩名誉教授(音楽人類学)は記憶遺産登録を目指す動きについて「日独交流の歴史を物語るとともに、20世紀初頭に日本で行われた西洋音楽活動に関する貴重な資料が数多く残っており、大いに意義がある」と話している。

 ユネスコ記憶遺産 世界の重要な遺産の保護と振興を目的に1997年から登録を開始。手書き原稿や書籍、写真などを対象に2年ごとに登録を行う。「アンネの日記」「マグナカルタ」など348件(2015年10月時点)が登録されており、このうち国内の登録は「山本作兵衛炭鉱記録」「慶長遣欧使節関係資料」など5件。