甲羅を背負った今の形になったのは2億年前、恐竜が栄えていた頃だという。人類は生まれて400万年ほどだから、比べてみればこんな具合だ。「亀の歴史を1日に置きかえると、人間の歴史はわずか20分にしかすぎません」(日和佐うみがめ博物館カレッタの説明板から)
その程度の人間が関係して生じた事態だとすれば罪深い。アカウミガメの産卵地として国の天然記念物に指定されている美波町の大浜海岸で今季、一度も産卵がなかった。記録が残る1967年以降で初めてのことだ
「5月のしけで砂が流出したのに加えて、産卵に影響を与える人工の光を減らす対策が十分でない、といった理由が考えられる」とカレッタの学芸員。産卵回数のピークは90年の161回で、徐々に減少してきた揚げ句のゼロである
産卵期には、砂浜への立ち入りと堤防沿い道路の車両通行を禁止するといった保護策もとられる。それでもまだ、カメにとっては不十分ということなのだろう
もっとも今季は日本各地の上陸地で産卵回数が激減している。原因はさらに大きなところにあるのかもしれない
わずか20分、とりわけ1秒にも満たない近代以降、人間は地球環境を急速に改変しつつある。産卵回数との因果関係は定かではないが、厚顔無恥な新参者への、カメからの警告のようにも思える。