阿南高専(阿南市)の杉野隆三郎教授(情報工学)の研究チームと牟岐町が、大口径天体望遠鏡の開発を進めている。町の澄んだ夜空を生かし、天体観測イベントなどに活用して地域振興につなげるのが目的。ほぼ完成した試作機は分解して持ち運べるなど、普及に向けて工夫を凝らしている。
試作機は口径30センチの主鏡を備え、14等星まで判別できる。架台を含めて高さ150センチ、幅84センチ、奥行き40センチで重量は18キロ。
「ドブソニアン」と呼ばれるシンプルな構造を採用し、ねじを外して分解すると、アルミ製支柱以外は中型スーツケース(50~70リットル)に収納できる。大型のレンズを装着しても重りを使わずに全体のバランスを保てるよう精密に設計し、軽量化した。
同校と牟岐町は2011年、地域振興を目指す連携協定を締結した。杉野教授らは、町内に街灯やネオンが少なく、夜空が美しいことに着目。手軽に扱える本格的な天体望遠鏡を作って、町おこしにつなげることにした。
杉野教授と同校の学生が13年、町から600万円の補助を受けて開発を開始。精密な加工は県立中央テクノスクール(徳島市)に協力を求め、昨年12月上旬に試作機をほぼ完成させた。
同スクール駐車場で試験観測したところ、肉眼ではぼんやりとしか見えない「プレアデス星団」などを鮮明に見ることができた。主鏡が上下左右にスムーズに可動することも確認した。
今後、レンズの焦点などの最終調整を行い、完成後に町内で天体観測会を開く計画。杉野教授は「まずは住民に、地元の星空の美しさを体感してもらいたい」と話している。