落語家の月亭八方さんの芸能生活50周年を記念した落語会が9月15日、鳴門市文化会館で開かれる。八方さんにとって徳島は初めてテレビのレギュラー番組を担当した思い出の地。半世紀の活動を振り返るとともに、記念公演への意気込みを聞いた。
―50周年記念公演は、東京、名古屋、大阪に加え、鳴門市文化会館。意気込みは?
「自分が最初にテレビのレギュラー番組をいただいたのが四国放送。四国4県の玄関口であり、思い出の地である徳島で、弟子の月亭方正と、息子の月亭八光を従えて落語をさせていただくことになりました。50年間の集大成。落語といっても堅苦しさは一切なく、落語という形の面白い話をしたいと思います。浮世を語って楽しんでもらうのが仕事。舞台は生ものなので、その時の世の中の雰囲気で演目を決めます」
―徳島の思い出について教えてください。
「20代のはじめ、四国放送で30分間の生放送の情報番組を1、2年担当しました。プロペラの飛行機で大阪から徳島に通っていました。当時は、徳島以外で仕事がないので、大阪に帰る必要がない。徳島に住み着いていたようなところがありましたね。少しでも長く徳島にいたくて、飛行機代を浮かせるためにも小松島からフェリーで和歌山経由で帰ったこともありました」
―50年を振り返って。
「10年目の時に『もう10年?』、20年目のときも『もう20年になるの?』。その繰り返しで、10年目も50年目も、あっという間というのは同じです。
私が若いころは『芸人のかい性』とか『芸の肥やし』とか言われた時代でね。それに対して真面目に取り組んだ結果、借金もし、会社からも叱られ…。後輩たちには『先輩たちはウソばっかり言うてる』と教えたい。芸の肥やしなんかない。自分で家で勉強するしかないんです。でも面白かった。楽しむ、面白がるというのがあってこそのこの世界とも思います」
―落語家を続けてきて感じることは?
「『生まれ変わってもこの仕事をしたい』というのと『もう、ようしません』というのと両方ある。生まれ変わられへんからよかった。だから後輩には『やめとき』と言ってます。特にしんどいこともないけど、仕事がないですからね。でも周りの誰かにはあるもんだから、それを見ていると自分にも回ってくるんじゃないかと思ってやめられない。貧しければ貧しいほどやめられないんです。それくらい周りに面白い人がたくさんいるし、楽しいことがあふれている」
―公演のPRを。
「落語会で面白いことを聞いて、さも自分が考えたことのように周りの人に言ったら、『面白い人やな』と人気が出るので、そのための手本になればいいなと思います。僕も米朝師匠が言ったことをそのまま学校でやったら『お前おもろいな』と言ってもらえましたもん。ぜひそれを徳島の皆さんにやってもらえたらと思います。
上方の文化は、権力に対して反抗・反発するもの。家では強い亭主を嫁がやりこめる、強い巨人に立ち向かう阪神を応援する、そんな上方の文化が落語にも表れています。生で見ると、出ばやしもあるので、テレビとは違う寄席独特の空気を感じられる。瞬発的な笑いばかりではなく、じっくり聞いて自分の判断で笑う落語を楽しんでほしい。
方正くんは幼顔ですけど、意外と頭が薄い。落語は最初必ずお辞儀をするので、そこを見てください。僕は70歳になったので、自分ではトントンとしゃべっているつもりでもたまに詰まります。やっぱり年やなあ、そこを見てもらいたい。八光があわてふためく姿もね。
見どころ満載ですが、見どころ聴きどころは会場に足を運んで、ぜひ自分で探してください」。
月亭八方50周年記念公演 落語誘笑会
日時:9月15日(土) 13:00開場、14:00開演
場所:鳴門市文化会館(鳴門市撫養町南浜字東浜24-7)
料金:前売3000円、当日3500円(未就学児入場不可)
問い合わせ:鳴門市文化会館 088(685)7088