半田そうめんの産地・つるぎ町半田で、そうめんを屋外で乾燥させる伝統的な天日干しをする製造業者が減っている。作業の効率化や衛生面への配慮から室内で乾燥させる手法が主流となり、半田地区の約35業者のうち、天日干しをしているのは3業者。「剣山おろし」の寒風に「白糸」のすだれが揺れる風景が消えつつある。
25業者が加盟する半田手延べそうめん協同組合の瀧原満組合長(74)によると、半田そうめんは太さ1・2~1・7ミリと一般的なそうめんより太く、乾燥に時間がかかる。30年ほど前は天日干しをする業者が20業者以上あったが、手間が掛かる上、天候にも左右されるため、効率的な室内乾燥に移行する業者が増えた。
瀧原組合長は、食の安全に対する消費者の意識が高まり、業者が衛生面に神経を使うようになったことも要因に挙げる。その上で「天日干しにも室内干しにもそれぞれ良さがある」と指摘する。
同町半田小野の「坂口製麺」は、1日目に麺を作り、翌日の朝から夕方まで天日で乾燥させる「2日そうめん」にこだわっている。坂口照明代表(68)は「天日干しは効率で考えると合わない。でも、自分がやめてしまうと地域の伝統が消えてしまう。小さいころから見慣れた風景を守りたい」と話す。
江戸時代後期、半田地区で最初にそうめん作りを始めたとされる同町半田小野の「赤川製麺」では、赤川治代表(68)が伝統を守ってきた。1日目に麺作りと天日干し、2日目に室内乾燥をしている。
均一に乾燥させるため、日光の当たり具合をこまめに確認するなど手間は掛かるが、赤川さんは「太陽と風の自然の力を借りると、色白の麺に仕上がり、うま味もコシも増すように思う。できる限り伝統的手法を続けていきたい」と言う。
半田そうめんの天日干しは昨年11月から始まっており、4月ごろまで続く。