徳島県建設業協会が転落事故などを防ぐために提案して生まれた「けんせつ体幹体操」が、全国の建設現場などで取り入れられている。体幹を鍛え、体のバランス感覚を高めるのが目的で、サッカー日本代表の長友佑都選手らを支えるトレーナーの木場克己さん(52)=東京都=が企画監修した。徳島県内では建設業界だけでなく異業種にも広がっており、同協会では「誰でも気軽にできるので、ぜひ多くの人に試してもらいたい」と呼び掛けている。
県建設業協会では、建設現場での転落や転倒による事故が絶えない上、従事者の高齢化に伴って増加が懸念されているため対策を検討。多くの現場では毎朝、ラジオ体操が行われているが、事故防止に向けた効果的な体操を取り入れようと考え、国内外のスポーツ選手で成果を挙げている体幹トレーニングに着目した。
2005年から14年までの県内の労働災害による死者は102人で、墜落・転落が最も多かった。
協会は全国的な活動として展開してもらおうと建設業振興基金(東京)に提案。基金は趣旨に賛同し、日本建設業連合会や全国建設業協会などで「けんせつ体幹体操製作委員会」を設け、15年11月に「けんせつ体幹体操」が完成した。
初級編と上級編があり、それぞれ約2分30秒。初級編は足踏みから始まり、肩のストレッチ、腰回し、片足上げ、スクワットなどが組み入れられている。サッカー元日本代表の福西崇史さんが体操のモデルを務めたDVDが作製されているほか、動画投稿サイト「ユーチューブ」でも見られる。
6月には、労働災害の予防啓発に取り組んでいるAIG損害保険(東京)が、スポンサーを務めるニュージーランドのラグビー代表チーム「オールブラックス」の選手を起用した「けんせつ体幹体操」の動画を公開し、関心を集めている。
徳島県内では、岡田組(徳島市)が完成当時から導入している。それまでは毎朝ラジオ体操をしていたが、けんせつ体幹体操に変えた。社員は「ラジオ体操は漫然としていた感じだったが、時間も短くなり、集中して濃密にできている」「具体的な効果を示すのは難しいが、体幹を意識するようになったのは間違いない」などと言う。
異業種では、徳島トヨタ自動車(徳島市)が2年近く前から行っている。社員が建設業協会の幹部から聞き、「整備士も体を使う。ぜひ取り入れよう」と考えた。同市中前川町5のショールーム「アトラツイン」では、整備士や営業担当ら約30人が毎朝、映像を見ながら体操している。
営業スタッフの森弘光係長は「以前に比べて、整備中のけがの報告も少なくなっている。私自身も体の切れが良くなった」と話している。