日亜化学工業(阿南市)は、4月から正社員の定年を60歳から65歳に引き上げる。定年延長で長く安心して働ける環境を整え、優秀な人材の確保を図る。県内に本社を置く企業で最も多い約7400人の社員を抱える日亜の定年延長は、他企業にも影響を及ぼしそうだ。

 定年延長は、日亜に在籍する大半の社員が対象となる見込み。2013年施行の改正高年齢者雇用安定法では、企業に希望者全員について65歳までの雇用を義務付けた。日亜が現在導入している再雇用制度では、60歳の定年後は嘱託社員として1年ごとに契約を更新している。

 4月から導入する制度では60歳で職位や仕事内容、給与を見直した上で、65歳まで正社員として雇用する。給与水準は非公表で、減少する社員もいるが一定額は保証するという。現在の再雇用制度も継続し、多様な働き方を提供する。

 子会社の日亜興業(阿南市)も同様の制度を導入する。

 日亜は「有能な技術者に能力を発揮してもらうことで、技術の継承にも役立つ」としている。

 日亜は1985年に正社員の定年を55歳から60歳に引き上げ、2006年から再雇用制度を導入した。

 徳島労働局によると、社員数31人以上で定年を65歳以上としている県内企業は118社(15年6月1日時点)。全体に占める割合は15・0%で、全国平均の15・7%をやや下回っている。労働局は「企業規模にかかわらず、他企業の取り組みのきっかけになれば望ましい」としている。