漫画・アニメで人気の「ちびまる子ちゃん」は、作者のさくらももこさんが小学生だった1970年代が舞台となっている。けれど、まる子が今ここにいるとおぼしき場面が、本紙で連載していた4こま漫画にあった。時は2011年3月18日
まる子が近所の「佐々木のじいさん」と、咲き誇る花の前にたたずむ。寒さに耐え、たくさん咲いたと花を褒めたまる子が、涙を浮かべて言う。「きっと大丈夫だよね、日本も」。じいさんは「大丈夫さ」と優しく返した
東日本大震災が起きて間もなく、さくらさんが被災地を励ますメッセージとして描いた。伝えずにいられなかったのだろう。この時、既に乳がんを患っていたという
享年53歳。足跡をしのぶには早すぎる。デビューから34年、漫画でエッセーで、弱い立場の人を勇気づけてきた
メルヘンの国を描いたもう一つの代表漫画「コジコジ」の1シーン。空を飛べずに悩む仲間を、主人公が慰めた。「飛べない時は、ゆっくり休めばいいじゃん」。さくらさんは表舞台に出るのを避ける人だった。病に負けるなと、応援できなかったのが残念だ
まる子に頼んでお悔やみを告げたい。「ももこ、あんたはえらかったねぇ。ゆっくり休みなよ。でも、あたしゃ心底悲しいよ」。いつもなら小生意気に聞こえるせりふが、何だか切なく響く。