日本テレビに入社後、半年で警視庁捜査一課の担当を命じられた私。

 次から次へと起きる事件や事故の取材を無我夢中で行い、1カ月がたち正月を迎えました。

 正月早々、新たな試練が私を襲ったのです。

 捜査員と記者とのコミュニケーションは、取材をする上で非常に大切です。

 そんなコミュニケーションの場の一つである、年に一度の「武道始式」に私も参加することになりました。

「武道始式」とは、捜査員が治安維持を目的に日々取り組む柔道や剣道の鍛錬の成果を披露するために行われる年頭の恒例行事。

 この中で、警視庁捜査員と記者との紅白試合も行われるのです。

 ただ、私は試合が行われるということは全く知りませんでした。

 師走に入って、上司から「これから夕方にこの竹刀を持って警視庁の武道場に行くように。捜査員の方が剣道を教えてくれるので」とだけ通達がありました。

 なぜ、突如自分が剣道を習わなければならないのかさっぱりわかりません。

 しかし、上司からの命令通り、私は夕方に警視庁の中にある武道場に通いました。

 竹刀など、振ったことは人生でほとんどありません。「一!、二!」という捜査員の掛け声に合わせて竹刀を振り、段々、「面打ち」、「小手打ち」、「胴打ち」と基本を学んでいきました。

 最初は武道場のモワ~とした独特のむせ返るような空気に抵抗を感じていましたが、人間とは不思議なもので、しばらくたつと練習終わりに爽快感を感じるようになり、背筋が伸びたような気になりました。

 上司からも「最近、姿勢が良くなったんじゃないか~?剣道の効果かもな」なんて言われると、素直にそうかも...なんて思ってしまっている自分がいました。

 年が明け、いよいよ「武道始式」の日となりました。