徳島をテーマにした全国公募の掌編小説コンクール「第6回徳島新聞 阿波しらさぎ文学賞」(徳島文学協会、徳島新聞社主催)で、大賞の阿波しらさぎ文学賞は、坂崎かおるさん(39)=横浜市、本名と顔写真非公表=の「渦とコリオリ」に決まった。徳島県内在住者と徳島出身者が対象の徳島新聞賞は幸田羊助さん(34)=本名洋介、鳴門市出身、兵庫県尼崎市=の「聖域」に贈られ、25歳以下を対象とした徳島文学協会賞は該当作がなかった。

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 応募427点(県内123点)の中で、最終選考に残った16点から入賞2点が決まった。

 阿波しらさぎ文学賞「渦とコリオリ」は、市民バレエに関わる姉妹の物語。出番直前、亡き姉の衣装をある女の子に貸すことをきっかけに、現実と幻想、過去が重なるような物語が展開していく。鳴門の渦やバレエの回転を描写することによって、見かけの大切さに気付かせてくれる。

 坂崎さんは、阿波しらさぎ文学賞について「地方文学賞の枠にとらわれず、小説の完成度や面白さを追求する姿勢が素晴らしい。その列の中に加えていただき、うれしい。背筋の伸びる思いがする」と喜んだ。

 選考委員は「一つの芸術論であり、世界観を提示できているところが見事だ。人間の肉体を通じて美が表現され評価される芸術をモチーフに、とても普遍的なことが描かれている」と高く評価した。

 徳島新聞賞「聖域」は、森を守る一族に生まれながらも、それに違和感を抱く少年の葛藤と成長を描いた。空海や本四架橋を絡めた。幸田さんは「力を出し切った感があったので、喜びもひとしお」と語った。

 最終選考は芥川賞作家の吉村萬壱さんと小山田浩子さん、徳島文学協会の佐々木義登会長(四国大教授)、徳島新聞社の木下一夫編集局長が務めた。ビデオ会議システムを使って行われた。

 阿波しらさぎ文学賞には賞金30万円が贈られる。徳島新聞賞は10万円。「渦とコリオリ」の作品全文と最終選考委員4人の審査評は26日付、徳島新聞賞の「聖域」は27日付の徳島新聞と徳島新聞デジタル版で紹介する。