徳島市出身の漫画家柳本(やなもと)光晴さんの「マンガ大賞2017」大賞受賞作「響(ひびき)~小説家になる方法~」を実写化した映画「響 –HIBIKI–」が9月14日から全国公開される。人気アイドルグループ「欅坂(けやきざか)46」の平手友梨奈さんが映画初出演、初主演を務めることでも話題の同作。ひと足早く観賞した柳本さんが、映画の感想や今後の執筆活動に向けた抱負を語り、直筆イラストを寄せてくれた。
ー 作品の映画化についてどう感じたか。
僕の漫画を実写化したいと思っていただき、実際にしてくださるほどの評価を頂けたことがうれしいです。ただ正直、漫画は漫画、映画は映画だと思っているので、映画の内容に関しては期待や不安というものはありません。
ー 実写化された作品を見た感想は。
まだ音や音楽がちゃんと入ってない段階でしたが、面白かったです。僕は普段、邦画は文句を言いながら見るんです。イベントが少ない、間が長い、音楽でごまかす、単調を情緒と言ってごまかす、会話が書けていない、やたらと叫ぶ、といった点について。
でも、「響」に関してはそういったことが全くなかった。イベント盛りだくさんで見どころしかありません。少なくともこの映画を「つまらない」の一言で切り捨てられる人はいないでしょう。
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【映画のあらすじ】
活字離れが進んで出版不況にあえぐ文学界に突如として現れた15歳の天才女子高生小説家・鮎喰響(あくい・ひびき、平手さん)。自分の信念に正直で破天荒な響の言動は、同級生や作家、編集者ら周囲の人々にさまざまな影響を与え、価値観を変えていく。共演は北川景子さん、アヤカ・ウィルソンさんら。月川翔監督。
ー 原作と比べて実写ならではの表現が印象に残った部分は。
響の暴行シーンは実写にするとインパクトが違いますね。少女が大の男を倒すっていうところが。「僕の下手な絵が実写だとこうなるのか。そう、これを描きたかったんだ!」って思いました。
月川翔監督も響を演じた平手さんも、小柄な少女が大の男を倒すところが作品の見どころの一つだというイメージを具体的に持っていただいていたそうで、それがこのシーンの迫力につながっているんだと思います。
ー 響を演じた平手さんの印象は。
はまり役という言葉以外は見つかりませんが、あえて他の言葉を探すなら「響を演じるのは彼女の運命だった」というところでしょうか。
欅坂46の楽曲「サイレントマジョリティー」のミュージックビデオで初めて彼女を見た時から持っていた「響がいた」という直感は正しかったです。
ー 映画が原作に影響を与える可能性は。
それはありません。響というキャラクターは既に存在していて、周りのキャラクターも存在していて、世界観は完成しています。もはや僕が何かに触れたから変わるという類いのものではないです。
漫画の世界の中で彼女たちに何が起こり、どう感じてどう行動するかは、僕の意図が入る余地があまりないんです。既に下地が出来上がっているので、僕はその中で必然を探すというか…。
言葉にすると難しいですが、例えば料理を作る時にレシピがあって食材がある。そこで作る直前に「スタンド・バイ・ミー」を見たからといって、出来上がる料理に影響は特にないでしょう。そういうことです。
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ー 今後の執筆活動に向けた意気込みは。
特にありません。強いて言うなら、原稿をなるべく遅れずに上げること。面白いものを作るとか当然ですしね。
1回1回がクライマックスと思われるくらいに面白い漫画を描くという、全ての漫画家が当然持っている矜持(きょうじ)を持って、その上でなるべく遅れないように原稿を上げます。
ー 徳島の読者にメッセージを。
僕は徳島で生まれ育った人間です。作品中に具体的に徳島の要素はありませんが、徳島で育った人間がこういうセンスを持ち、それが世に認められて、映画という形にまでなった。
響という漫画と映画を見て、郷土の人間が頑張ってるな、あるいは、俺はもっとすげえ何かになるとか、何かしら思ってくれたらうれしいです。
やなもと・みつはる 徳島市出身。2014年から「ビッグコミックスペリオール」(小学館)で「響~小説家になる方法~」を連載。同作で「マンガ大賞2017」大賞を受賞した。単行本は現在、10巻まで発売中。これまでの作品に「女の子が死ぬ話」「きっと可愛い女の子だから」がある。