製造期間は1962~69年ごろというから、現役で活躍したのはいつまでだろう。筆者はおぼろげながら幼いころに使ったと記憶する。赤い塗装が鮮やかな、瓶入りコカ・コーラの初代自動販売機。国立科学博物館が、将来へ引き継ぐべき重要な技術製品(愛称・未来技術遺産)に選んだ
硬貨を入れると、販売口から瓶を抜き取れる。庫内の棚に傾斜がついていて、1本売れる度に商品が販売口に転がる仕組み
今や全国に設置されている飲料・食品の自販機は250万台を超える。その基礎となり、新たな生活様式の創出に貢献したのだから納得いく選定だ
自販機といえば、阿波市土成町のコインスナックでカレーライスを提供している1台を忘れては困る。管理者の吉本忠さん(75)が設置して35年。当時から変わらぬレトロな外観が、インターネットで話題となった
レトルトのカレーに、真骨頂はご飯。吉本さんが毎朝欠かさず白米を炊き、容器一つ一つに詰めている。県外客も珍しくなく、一日に平均10食前後が売れる
吉本さんは「孫が高校を卒業するまであと5年、何とか続けたい」と言う。いやいや、願わくは機械と一緒にお元気で、もう10年、20年。<科学技術史上、重要な成果を・・・>という未来技術遺産の条件には合致しないにしても、大勢の記憶に残る自販機なのだから。