サメに襲われて前足の一部を失い、日和佐うみがめ博物館カレッタ(美波町)で一時保護されていたアカウミガメ「悠ちゃん」を紹介するノンフィクション「あしをなくしたウミガメ悠ちゃん 人工ヒレで泳げるように!」が学研プラス(東京)から出版された。NPO法人日本ウミガメ協議会などの尽力で人工ヒレを装着し、回復するまでを追った感動物語。カレッタで過ごした日々の様子も、ふんだんにつづられている。
著者は奈良県在住の児童文学作家・中谷詩子(うたこ)さんで、2013年6月から約1年間、美波町などで取材を重ねた。海に帰すため、人工ヒレの試作品を着けたところ、締め付けで前足の一部が腐ってしまったり、体が成長してヒレのサイズが合わなくなったりといった苦労話を収めている。
通算10カ月を過ごしたカレッタでの様子も描写。田中宇輝(ひろき)学芸員(30)らが、前足の傷が悪化しないように専用の水槽に入れ、2日に1度消毒したり、抗生剤を投与したりして治療を続けたことが描かれている。
悠ちゃんは08年6月に紀伊水道で漁師の網に掛かり、保護されたアカウミガメの雌。カレッタと神戸市立須磨海浜水族園で交互に飼育され、カレッタでは避寒のため08年と09年の冬を過ごした。10年4月からは須磨海浜水族園に移されている。この間、日本ウミガメ協議会が義肢メーカーなどの協力で、人工ヒレを開発。試行錯誤を経て、14年に通算36作目で完成した。
A5判、136ページ。1404円(税込み)で、売り上げの一部は悠ちゃんの人工ヒレの維持管理や飼料、治療などの費用に充てられる。